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純文風にアレンジしてみた。異論は認める。

 缶コーヒーの温もりを手に感じながら、夕闇が少しずつ街を侵食していくのを眺めていた。夜の暗がりは陽の光が持つ健全性をゆっくりと奪ってゆき、人々は理性の仮面を外し欲望を晒し始めていく。夜は嫌いだ、と思う。頭の中に残って消えない痛みが疼き始めた。
 私にとって、母親の記憶は夜と朝ではまるで違う。夜の母は恐ろしかった。小学生、低学年か中学年か、つまり、家庭から父親が居なくなってから夜の母は不機嫌そうな表情見せ、私を殴った。私が殴られなければならない理由を口にする彼女の息は消毒液のような匂いがした。私を床に押さえ付け、奇声のような声を聞き殴られるたびに、見ている景色はピントを外した写真のように、その輪郭を失った。頭の芯の部分に鈍い痛みが蓄積されていくのを感じた。お前が悪いのだ、と言われるたびに、私の悪さを恥じた。何が悪いのかよく分からないまま、私は母に許しを求めた。生きてて、ごめんなさいと。