五十年ボタン?なんだそれ
五十才になった人が、役所に行って押すらしい
押して、どうなるんだ?
それは知らない
入籍を明日に控えた俺は、独身最後という事で、親しい友人に呼ばれ、飲み明かした。
五十年ボタンとやらが本当にある。
そう知ったのは既に銀婚式を明日に控えた昨日。役所から届いた手紙で知った。
『工藤 颯様、飛鳥様。この度は五十歳の誕生日、誠におめでとうございます。つきましては、五十年ボタンの日程を通達致したく存じます』
そんなものが本当にあるのか、、、。早速友人に連絡すると、友人にも同等の手紙が来た事、俺と俺の嫁、飛鳥と、友人は日程が違うことを知った。
二月十一日。
飛鳥と共に役所へ向かった。
待合室には大勢の、所謂『中年』が集まっており、若き頃の思い出は微塵も思い出せないような、人生の折り返し地点にいるのだと、改めて痛感した。
「工藤 颯さーん、飛鳥さーん、三番の待合室でお待ち下さーい」
俺は役所なんて滅多に来ないので、三番の待合室とか病院か!とか思ってたけど、そんな風に軽く考えていられるのも今だけだった。
「では、今から五十年ボタンを押していただきます」
目の前に出されたのは、クイズ番組とかで出てきそうな、赤くて奇抜なボタン。
飛鳥にも同じボタンが手配されており、二人で、せーので押した。
「ん?」
長く眠っていたような気がしたが、ここは俺の実家、、、?
いや、実家以外の何物でもない。この古臭いのに高いやね、昭和感漂う電気。
そうだ、ここは俺の家、工藤家だ。
「あら颯ちゃん起きたのね」
現れたのは、まだ少し若く、声の高い頃の母。だが、母はもう亡くなっている。
そうか、これは五十年ボタンを押すことによって見られるただの夢なんだ。にしても、母ちゃんに会えるなんて、俺は相当ツいている。
暫く母の顔を拝んでいると、これまた若くチャラい父がやってきた。
「おお!颯!起きたか!」
若いな。今の俺よりもきっと若い。
『へいへい、起きましたよ』
あれ、声が出ない。
『起きたよ!』
『え?は?』
瞬間、何かを察した。
恐る恐る自分の手を見つめる。
そこには、赤ん坊の手があった
は?
父や母の言っていた颯、これは紛れもなく俺の名前。そしてこの天井は紛れもなく俺の実家。なのに、俺は、赤ん坊。それに、母ちゃんも父ちゃんも若い。ってか母ちゃん生きてる。あと、妹がまだ居ない。あと愛犬のポチとナナもまだ生きてる。
要は、、、
ータイムスリップ?
いやいやまさか、いやでも、これだけの証拠があって否定なんて出来ないんじゃないか。
いやでもこれは夢、そうだ夢だ。
ぼんやりと天井を見つめながら再び目を閉じた。
次に目が覚めたのは、あたりの暗い夜。
さぁ、不思議な夢を見たが、走馬灯モドキに浮かれるのもこれくらいにして、、、。
もう一度、掌を見る。
赤ん坊の手。ん?この夢はまだ覚めていないのか?。取り敢えず用を足しに立ち上がった。
「え?颯ちゃん!?」
「ちょっとあなた!颯ちゃんが!!」
「何だ、騒々しい」
「って、あ”あ”!?」
「ちょっと梨花!病院連れて行くぞ!!」
「え、えぇ」
ここで一つ疑問がある。何故俺は立てるのに、声が出ないんだ。
そこで俺は衝撃の事実を知ってしまった。
「工藤さん、落ち着いて、冷静に良く聞いてください」
「は、はい」
「颯ちゃんが何故立つことができるのか、それはわかりません」
そりゃそーだ。中身は親父より年上のジジイんなんだから。
「そうですか、、、」
「ですが、一つ、新たに分かったことがあります」
「な、なんですか!?」
「颯ちゃんは、声が出せない、ということです」
え?。立てるのは紛れもなくジジイの俺が関わっている。だが、声は知らん。声は、、、。
「嘘、、、」
母は死んだ目をして呟いた。
「先生!!どうにかならないんですか!?」
父が怒鳴り出した。
「これは三歳、脳の発達が始まり、記憶能力も発達してくる頃、ギリギリ治るでしょう」
「もしかしたら、颯は声が出せない事を引きずる可能性もある、という事ですか」
「はい」
過去の俺は、きっと助かったんだろうな。だって俺は、今まで知らなかったもん。けどなぁ。
0010なまえ_____かえす日2019/03/03(日) 16:34:42.83ID:+aGAjOON
あく更新しよよ
(; ̄Д ̄)なんですと? Σ(`゜Д゜´//)ななななな、な二ッ!?