霙混じりの雨の日、小さな子供さんの手を引いているお爺さんを見た。左手に傘、右手は子供さんの手を握っている。お孫さんだろう。
とても寒く吐く息が白い。私は家路を急ごうと歩を進めた…。
その時、自転車に乗った新聞配達の人が止まった。新聞を濡らすまじと体を曲げて盾にし、新聞を守っている。その新聞を新聞受に配達するとさっと次の配達先へと向かった。
その様子をさっきの子供さんがじっと見ている。お爺さんは風邪をひかせてはならじと、子供の手を軽く引っ張る。子供さんはじっと新聞配達の方を見ながら動こうとしない。その様子を私が見ている。
まだ三歳にも満たないかもしれないこの子供さん。仕事の厳しさや責任、仕事に対するプライド…。まさかこの子がそんな事は感じながらじっと見ていたとは思わない。
しかし、それが何であれじっと止まって新聞配達員さんの仕事をきょとんとした目で見ていた事には間違いない。
何を感じていたのかは分からないけど、立派な大人になるなぁこの子は…と思った。
おっと、急いで帰らないと嫁にまた叱られる。頼まれた惣菜を買ったのを確かめて家路に急いだ。