[格差社会についての基礎知識](文芸春秋)
所得格差の拡大は日本社会をどう変えるのか?
急速に進行する二極分化
二〇〇四年一―三月期の実質GDP成長率が六・六%(速報値、年率換算)の高成長を示したという
内閣府の発表があって以来、景気の回復ぶりを伝える報道が続いてきた。
しかし、国民の多くはその実感を持てずにいる。
こうした統計数字と実感のずれを生む原因の一つと見られているのが、
企業の場合は収益、個人ならば所得の格差拡大である。
「一人勝ち」の言葉があるように、一人の勝者が、残りの敗者からすべてを奪ってしまう。
景気の回復を実感し高い収益を享受する勝ち組はほんの一握りであり、
大半は赤字に喘ぐ負け組といった状況になりつつある。
厚生労働省が〇四年六月に発表した「二〇〇二年度の所得再配分調査」によると、
世帯ごとの所得格差の大きさを示すジニ係数は、調査を始めた八四年から七回連続で拡大を続け、
今回は〇・四九八三と過去最高を更新、〇・五に限りなく近づいている。
ジニ係数〇・五とは、高所得の四分の一の世帯が全体の四分の三の所得を占める状態である。(中略)
橘木俊詔・京都大学大学院教授は『封印される不平等』(東洋経済新報社)の中で指摘し、
九〇年代から急速に格差が広がっていった理由を次のように分析する。
「九〇年代から現在まで、経済の大停滞期が続くことになったが、
その回復策として金融業における自由化政策、資本市場における規制緩和、
労働市場において解雇をやりやすくするように法律を変えたり、
非正規労働者を多く雇用する政策等がとられた。
規制緩和が行き着くところまで行って市場原理による競争が激化すると、
勝者と敗者の賃金格差が拡大する。
所得分配の不平等化がこのまま進行すれば、アメリカ並みの不平等、貧富の格差に近づく可能性すらある」。
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