モニタなにつかってる?
>>686-690 で紹介した ARIB TR-B28 マスターモニター要求条件 が発表されたのは2006年だが、この資料を下敷きにITU-R BT規格書が作られ、2009年に発行された。 ITU-R BT.2129 User requirements for a Flat Panel Display (FPD) as a Master monitor in an HDTV programme production environment HDTV番組制作環境におけるマスターモニターとしてのフラットパネルディスプレイ(FPD)のユーザー要件 ARIB TR-B28の内容から、日本固有の状況説明などを省き、2006年以降に判明した事柄を追加しているようだ。 だが、大筋の内容は同じである。 TR-B28は有償なのですぐに閲覧できない。 BT.2129は無償公開なので、取り急ぎ確認に迫られた場合は便利であろう。 https://www.itu.int/dms_pub/itu-r/opb/rep/R-REP-BT.2129-2008-PDF-E.pdf ITU (国際電気通信連合) について 情報通信分野の国際標準規格を取りまとめる機関 世界中の企業、業界団体、研究機関などが作成したレポートや規格を元に 国際標準規格をまとめ、世界中に告知することが目的 ITU内部組織 3部門 ITU-R 無線通信部門 ITU-T 電気通信標準化部門 ITU-D 電気通信開発部門 ITU-Rが発行する規格書の分類 BO 衛星配信 BR コンテンツ制作の記録、保存と送出; テレビ用フィルム BS 放送 (音声) BT 放送 (テレビ) F 固定サービス M 携帯、無線測位、アマチュアおよび関連衛星サービス P 電波伝搬 RA 電波天文学 RS リモートセンシングシステム S 固定衛星サービス SA 宇宙応用と気象学 SF 固定衛星と固定サービスシステム間の周波数共有と調整 SM スペクトル管理 ITU-R BT規格書のうち、テレビ導入機種選考、画質評価、カラーマネージメントなどに関わりそうなもの 下記22点について、投稿を分割しながら簡単に紹介していく。 500 / 601 / 709 / 710 / 814 / 815 / 1127 / 1128 / 1129 / 1210 / 1846 / 1886 / 2020 / 2022 / 2035 / 2087 / 2095 / 2100 / 2129 / 2246 / 2390 / 2408 BT.500 Methodology for the subjective assessment of the quality of television pictures テレビ画像品質を主観的評価するための方法論 映像機器の画質評価にはさまざまなテスト方法、設定条件がある。 その基礎と位置付けられる規格書が、IRU-R BT.500だ。 初版発行は1974年だが、最新13版は2012年1月。時代の変化に合わせ、改訂を13回も行っている。 テスト条件を加えたり、条件を絞り込む場合は、他のBT規格書も併用する。 ・映像機器を人間が目視し、主観的な印象で画質に5段階評価をつける (実際には複数の評価方法があるので、規格書の精読が必要) ・以下2パターンを見比べ、優劣をつける 1. 映像ソース -> テレビ直結 2. 映像ソース -> 検査対象の映像機器 -> テレビ直結 ・評価用映像ソースは、かつては35mmフィルムスライドスキャナーを想定していた ・テレビ設定値と室内照明は、以下二通り、それぞれ条件設定されている (1)研究所実験室 (2)一般家庭に準じる環境 ・観察者は、最低でも15人以上そろえる ・評価集計レポートには、観察者の属性を書き添える (例 映像機器専門家 or 非専門家, 映像制作関係者 or 無関係, 学生 or 社会人, など) ・観察者の目視作業時間は、1人当り30分以内にする ・観察者全員の評価記入シートを集め、指定された計算式を使い、スコアを出す https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.500 BT.601 Studio encoding parameters of digital television for standard 4:3 and wide screen 16:9 aspect ratios 標準4:3およびワイドスクリーン16:9のアスペクト比に対するデジタルテレビのスタジオエンコーディングパラメータ SD解像度時代のテレビ規格、色空間を定義したもの。 HD解像度向けのBT-709とは、白色点の位置が違う。 編集ソフトによっては、白色点の自動合わせ込み機能が誤動作する可能性もある。 古いSD素材を、HD解像度プロジェクトへインポートする際は注意が必要。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.601/en BT.709 Parameter values for the HDTV standards for production and international programme exchange 番組制作および国際番組交換用のHDTV規格パラメータ値 HD解像度のために定義された色空間。 ブラウン管を前提としており、液晶やプラズマなどフラットパネルを考慮していなかった。 ブラウン管互換のガンマカーブをフラットパネルへ当て込むため、 のちにBT.1886が策定されることになる。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.709/en BT.710 Subjective assessment methods for image quality in high-definition television HD解像度テレビの画質に対する主観評価法 観察者が目視するテレビ設定値を述べたもの。 画面上のピーク輝度 150-250cd/m2 、画面色温度D65、などの記述がある。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.710/en BT.814 Specifications of PLUGE test signals and alignment procedures for setting of brightness and contrast of displays PLUGEテスト信号仕様、ディスプレイの明るさ、コントラスト設定の調整手順 テレビ調整時に表示させる、単純な図形映像(プルージ)の取り決め。 以下の記載が見られる。 ・ピクチャモニタに表示された状態 ・波形モニタに表示された状態 ・各図形のルミナンス値 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.814/en BT.815 Specification of a signal for measurement of the contrast ratio of displays ディスプレイのコントラスト比を測定するための信号仕様 テレビ調整時のコントラスト測定用、単純な図形映像の取り決め。 50%グレー(126/235)を背景に、ブラック(16/235と、ホワイト(235/235)の四角形が表示される。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.815/en BT.1127 Relative quality requirements of television broadcast systems テレビ放送システムの相対品質要件 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.1127/en BT.1128 Subjective assessment of conventional television systems 従来のテレビシステムの主観評価法 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.1128/en BT.1129 Subjective assessment of standard definition digital television (SDTV) systems SD解像度テレビの画質に対する主観評価法 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.1129/en BT.1210 Test materials to be used in assessment of picture quality 画質評価に使用する試験素材 画質評価のときに流す映像素材に必要な条件を述べている。 しかし抽象的な文言が多く、具体的な素材映像名は挙げていない。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.1210/en 映像情報メディア学会 テストチャート BT.1210などに適合する実物として作成された映像素材サンプル。有償頒布。 https://www.ite.or.jp/content/chart/ BT.1846 Notations for video systems 解像度/フレームレート/階調の表記方法 実際の記述例がある。(1920×1080/50/I 1080/30/PsF など) https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.1846/en BT.1886 Reference electro-optical transfer function for flat panel displays used in HDTV studio production HDTVスタジオ制作で使うフラットパネルディスプレイのEOTF ブラウン管に近い表示をフラットパネルにさせるためのガンマカーブ(=EOTF) 詳しい内容は過去の投稿 >>673-678 に記載済み。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.1886/en BT.2020 Parameter values for ultra-high definition television systems for production and international programme exchange 番組制作および国際番組交換用のUHDTV規格パラメータ値 SD解像度の色空間 BT.601、HD解像度の色空間 BT.709 これらの規格に続き、4k/8k解像度の色空間として定義されたもの。 最新版は2015年10月発行、第2版となっている。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2020/en BT.2022 General viewing conditions for subjective assessment of quality of SDTV and HDTV television pictures on flat panel displays フラットパネルディスプレイでSD解像度/HD解像度テレビ画像品質を主観的評価するための一般的な視聴条件 研究所の実験室と、一般的な家庭の視聴環境では、規定値が異なっている。 実験室環境 部屋の照明: 低いこと 背景の色度: 分光分布 6500k ピーク輝度: 70-250 cd/m2 モニターコントラスト比: 0.02以下 画像のピーク輝度に対する背景画像の輝度の比: 0.15 家庭環境 スクリーンの環境照度: 200 ルクス ピーク輝度: 70-500 cd/m2 非アクティブ画面の輝度とピーク輝度モニタのコントラスト比:0.02以下 (注) スクリーン上に落ちる環境からの入射光は、スクリーンに対して垂直に測定する必要がある (注) ピーク輝度は部屋の照明に合わせて調整する必要がある https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2022/en BT.2035 A reference viewing environment for evaluation of HDTV program material or completed programmes HDTV番組素材または完成番組を評価するときの参照視聴環境 ピーク輝度値に要注意。前述のBT.2022と異なる。 BT.2022ではかなり幅を持たせていたが、BT.2035は100cd/m2の固定値。 どちらの規格書に従うかは、内容精読の上、個々の状況に応じて選んで頂きたい。 ・基準白および基準黒基準白 (値940) 100cd/m2に対応させること ・基準黒 (値64) 0.01cd/m2未満にすること ・白色点 D65にすること ・ガンマカーブ(EOTF) BT.1886に従うこと ・その他 BT.2129に従うこと https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2035/en BT.2087 Colour conversion from Recommendation ITU-R BT.709 to Recommendation ITU-R BT.2020 ITU-R BT.709からITU-R BT.2020への色変換 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2087/en BT.2095 Subjective assessment of video quality using Expert Viewing Protocol 専門家による視聴手順を用いたビデオ品質の主観評価 BT.500で求められる観察者は最低15人。 用意すべき機材も考えると、実施はかなりの負担になる。 少人数・小規模で評価テストを行いたいという要求に応えて決められたのが このBT.2095のようだ。 映像関係の専門家、最低9人から実施可能とされている。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2095/en BT.2100 Image parameter values for high dynamic range television for use in production and international programme exchange 番組制作および国際番組交換に使うHDRテレビの画像パラメータ値 言及される事が多い規格書だが、原本は下記URLからダウンロードできる。 最新の第2版は、2018年7月発行。 https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2100 BT.2129 User requirements for a Flat Panel Display (FPD) as a Master monitor in an HDTV programme production environment HDTV番組制作環境におけるマスターモニターとしてのフラットパネルディスプレイ(FPD)のユーザー要件 >>686-690 >>727 で紹介したもの。 自分の手で実際に業務用モニターを調整するとき、 印刷して手元に置けばチェックシート代わりにできるだろう。 https://www.itu.int/pub/R-REP-BT.2129 BT.2246 The present state of ultra-high definition television 超高精細テレビの現状 世界各国の基礎研究を包括的にまとめた内容。第6版発行は2017年。 実際の機材を運用するときのガイドブックにはならないが、さまざまな機関の研究成果が垣間見える。 考察レベルではなく、反証作業などを終えた確定レベルの情報も多い。 表示デバイスの先端研究成果を知ることができる、貴重な一次情報引用元として覚えておきたい。 http://www.itu.int/pub/R-REP-BT.2246 BT.2390 High dynamic rangetelevision for production and international programme exchange 番組制作および国際番組交換に使うHDRテレビ OOTF, OETF, EOTFの定義、PQ<->HLG相互変換方法、各方式の概要などがまとめられている。 https://www.itu.int/pub/R-REP-BT.2390 BT.2408 Guidance for operational practices in HDR television production HDR映像制作における運用方法のガイダンス >>703-705 で紹介したが、撮影/編集を職業とする方は必読。 今後、HDRコンテンツ制作時に指標と成りえる、ルミナンス値が記載されている。 主要な被写体のルミナンス値が書かれた TABLE2 は、第0版(2017年10月)と第1版(2018年4月)で、内容が変わった。 第0版 物体 | cd/m2値 | PQ値 | HLG値 ーーーーーー|ーーーーー|ーーーーー|ーーーーー 肌色 | 地域によって異なる (値は未記入) | | | 森林樹木 | 30-65 | 39-47 | 40-55 氷の表面 | 155 | 55 | 71 放散白色 | 140-425 | 54-66 | 69-87 第1版 物体 | cd/m2値 | PQ値 | HLG値 ーーーーーー|ーーーーー|ーーーーー|ーーーーー 明るい肌色 | 65-110 | 45-55 | 55-65 中間の肌色 | 40-85 | 40-50 | 45-60 暗い肌色 | 10-40 | 30-40 | 25-45 | | | 森林樹木 | 30-65 | 40-45 | 40-55 最新版は、2019年4月発行の第2版。ページ数は 19->35->41 と増える一方だ。 改版は、ページを増やすだけではない。内容の一部が書き換えられる場合もある。要注意。 油断せず、こまめな再チェックをおすすめする。 https://www.itu.int/pub/R-REP-BT.2408 公共空間で多数の人間が集団視聴する大型表示デバイスについても、ITU-Rは規格書を出している。 BT.2000 Use of large screen digital imagery Recommendations in video information systems applications 大画面デジタル映像(LDSI)を使う、ビデオ情報システム(VIS)を運用するときの推奨事項 BT.2000規格書自体は、あまり詳細を述べていない。 参照すべきほかの規格書番号を紹介し、振り分けている。 (BT.1662〜1666, 1679, 1680, 1686〜1690, 1694, 1721, 1727, 1734) https://www.itu.int/rec/R-REC-BT.2000/en ITU-R BT規格書、主要なものを見つけやすいようURLがまとめられた一覧ページはこちら。 https://www.itu.int/pub/R-REP-BT/en 規格書紹介はここで一区切りし、終了する。 後日、注意喚起が必要と思われる事柄が見つかれば、随時投稿する。 ITU-R BT.2245 HDTV and UHDTV including HDR-TV test materials for assessment of picture quality 画質評価用のHDR-TVテスト素材 (HDTVとUHDTVも含む) >>732 で述べた、BT.1210 (画質評価に使用する試験素材) の具体例提示。 映像機器のテストで使う指定映像素材が、サムネール静止画付きで示されている。 サムネールのうちいくつかは、CIE1931色度図内の色分布グラフも併記。 https://www.itu.int/pub/R-REP-BT.2245 指定映像はおそらく有償頒布、用途も制限されている。 入手方法は、下記団体いずれかに問い合わせたほうがよいだろう。 日本ITU協会 https://www.ituaj.jp/ 映像情報メディア学会 https://www.ite.or.jp/ ITU-R BT.2245 指定映像 使用制限 映像設備構築業者は、システム調整時や障害調査時、共通映像素材を必要とする事がある。 メーカー・輸入代理店・販売店は、技術セミナーや販売促進展示会をひんぱんに行う。 これらの状況で、前述の指定映像を使えるか否かの基準は、BT.2245規格書 Annex3項に書かれている。 許される使い方 a) 技術的評価 - 機器及びシステムの、研究開発 - 開発及び製造工程中の、機器試験 - 放送及び電気通信のための、伝送条件試験 - 機器のメンテナンス b) 技術的デモ - 技術会議やワークショップでの発表 - 展示会で、機器の性能と機能の発表 禁じられる使い方 商用制約 - 販売商品に同梱 - 販売商品の宣伝用デモンストレーション コピーの配布 著作権者、あるいは許可された頒布者にのみ許される ITU-R BT.2245-6 (2019年4月発行) 指定映像 撮影使用機材 解像度 1920×1080 カメラ: ソニー製 HDC-1500 / SRW-9000 / HDC-F950 / HDW-750P ARRI製 D21 RedDigital製 RED ONE レンズ: シネレンズ各種 (キヤノン製 or フジノン製) レコーダ: アストロデザイン製 HR-7401 JiuHeCheng製 非圧縮HDレコーダ 解像度 3840×2160 カメラ: ソニー製 PMW-F55 レンズ: ARRI/ZEISS製 マスタープライム レコーダ: ソニー製 AXS-R5 解像度 7680×4320 カメラ: ハッセルブラッド製 H4D-200MS センサー種類 CCD センサーサイズ 49.1×36.7mm デモザイク後ピクセル数 8176×6132 pixel 色階調 16ビット レンズ: 不明 レコーダ: カメラ挿入メモリカードにRAW記録 read.cgi ver 07.4.7 2024/03/31 Walang Kapalit ★ | Donguri System Team 5ちゃんねる