小学校五年生の我が子の運動会は来月だ。

その晴れ姿を観るためにもこのダマスカスの戦場から生きて帰らねば。
フリーカメラマンの俺はレバノンからシリアに入り反政府軍と共に行動し取材を続けて来た。

愛機ペンタックスはパーマセルテープを貼りまくって光の反射を殺し、シリア政府軍に見つからないよう細心の注意を払っている。

ロシア軍からの空爆が止んだ今日は市街地でのCQBだ。兵士はマグポーチのみの軽装で銃身の短いアサルトライフルを持ち、息を潜める。

物音を立てるのは命取りだ。先頭を行く味方のリーダーのジェスチャーと共にみな静かに身を屈めた。

緊張の瞬間。

その光景を残したくて、静止しているリーダーにレンズを向けた。『ピューリッツァー賞、俺と愛機ペンタックスが貰ったな。フッ』
レリーズを押した次の瞬間、

「にょーーーーーー!!」

(AF迷走からの無限遠リセットと思考停止によるレリーズ受付中止)

このペンタックス音で敵に位置を知られた俺達は撃たれまくり、多数の尊い人命が奪われた。

こんな事になるなら素直にFZ1000にしておけばよかった。