ハリルさんは鬼才。その情熱はまさに火の鳥だ。彼が怒りを持って飛んでいくと、ついて行く忠実なフォロワーたちも火傷をする。あの分厚い眉毛から稲妻が放たれ、雷が落ちる。
温室育ちの日本人選手たちはその前で萎縮し、他の日本人スタッフにも猛獣使いのノウハウはなかったのだろう。
「私なら出来る!」と思い、日本サッカー協会にアピールして、いくつかの仕事を私も任されることになった。しかし、私と同様に異文化を知り、ハリルさんの波乱万丈な人生も理解している人間が、本当は、さらに3、4人は必要だったのではないだろうかと思っている。

思い返せば、日本での彼の記者会見やテレビ出演はいつも硬かった。取材する側は彼のツボを掴めなかった。彼を少し讃えてから話を始めれば、すぐにあの殻は破れるのだ。
「そんな必要はない!」と言われるかもしれないが、これこそ日本人が苦手な外交、異文化コミュニケーションだと私は思う。ボスニアやアフリカでは、大事な話をする前に、お茶をしたり四季の話をしたり、ジョークも飛ばすものなのだ。