「呪いの言葉」

誰かがそれぞれに思う
“ふつう”が“正義”に変わるとき
彼の背後から呪いの言葉が聴こえる

そう 彼は“ふつう”ではない
ふつうに出来ないの?と言われ続けるうちに“ふつう”という言葉が嫌いになった
だから 彼はみなが共有するあらゆる“ふつう”に抗う

そして“正義”という言葉の意味を考える
“ふつう”も“正義”も人それぞれにある
それぞれにあるから拗らせた彼は厄介でしかない

だから 彼は拗らせる
今はことあるごとに断罪したがるし
世の中もまともに機能していないと決めつける

“正義”を纏った“ふつう”がいけしゃあしゃあと街を闊歩する
彼は何個命があっても足りない心地がする
投げつけられる言葉に幾度となく殺される 今このときも
効いてる効いてる

「生産性がない」
「あいつは不良品だ」
臭いの強い誰かの言う“正義”が“ふつう”になることを恐れる

「それは違う」
「いくらなんでも言い過ぎではないか」
声を上げれば見ず知らずの“正義”が容赦なく刺してくる

そんな彼になってしまった
こんなはずじゃなかった
どこかの街では許可を得たデモは警官が随行し言論の自由を保障する

本当なら殴れたらいいけれど(誰?
殴ったら殴った人間に裁きが待つ
法律を守ることができない悲しみを常に抱えている