>>32続き)
 
それを受けて、「じゃあ、コッチの席のお客様にも見えるように、少し角度を変えて、こういう風にしよう」
と手直しして、全方位から見えるようにします。
 
この「死角を作らないようにする」というのが僕が舞台の世界で最初に教えていただいたことでした。
 
■「オンライン配信チケット」という新たな選択肢によって生まれたニーズ
 
ただ、コロナがやってきて、「オンライン配信チケット」というのが、観劇の選択肢に入ってきました。
「観劇の選択肢」どころか、グッズとしても売られるようになってきたんです。
 
僕が東京でやったファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』では、
出口のグッズ売り場で、今回のオンライン公演のチケットを販売していたんです。 
「家に帰ってもう一回観よう」というニーズが生まれたんですね。
 
その時に、「オンライン配信チケット」がたくさん売れた方がいいわけじゃ無いですか?
となると、「オフライン」との違いがあった方がいい。
オフラインで見れなかったものが、オンラインで見れた方がいいですよね。
 
となってくると、そこから逆算して、舞台ではむしろ「死角」を作るようにしたんです。
というか、席によって、見えるものが若干違うようにしたんです。
 
ファミリーミュージカル『えんとつ町のプペル』のステージって、前っペリが台形状に出っぱっているんですけども、
ステージを台形状にしちゃったら、基本、死角だらけなんです。 
右側の席のお客さんが、左の方が見えないし、左側の席のお客さんが右の方が見えない。
 
だけど、そこで「見えない」という不満を生むのではなくて、
右端の席のお客さんにしか見えないエンタメを挟んだり、
左端の席のお客さんにしか見えないエンタメを挟んだりするんです。
 
すると、そこが特等席になるじゃないですか?