ここがおかしい 小林節が斬る!
朝の通勤電車 女性専用車両は男性に対する「逆差別」か? (日刊ゲンダイ, 2018/05/13)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/228972/

朝の通勤列車に女性専用車両を設けることが男性に対する「逆差別」だと主張する人々がいる
……という新聞記事を興味深く読んだ。

確かに、女性専用車両は、鉄道会社の施設管理権に基づき、男性に対して男性であることを
理由に「それに乗るな」と命ずるもので、形式的には男性に対する性差別ではある。

しかし、経験上(統計上)、満員電車の中で多数の女性が痴漢被害に遭ってきたことは、
公知の事実で、それは強制わいせつという犯罪で、それが女性専用車両で確実に防げる以上、
そこには最大級の公益性がある。

男性には乗る車両を選ぶ自由(人権?)があるとしても、それも公共の福祉(他者の人権との
調整)のためには制約されると憲法12条、13条に明記されている以上、何の問題もないであろう。

男性の側には、その時間帯に限り、ホームの上を少し歩いて他の車両に乗ることが求められる
だけで、それが「被害」と呼べるほどの負担でないことも明らかである。

それにしても、その車両を「選びたくても選べない」ことを「差別」だとして怒る男性の心情
が問題であろう。それは、痴漢被害(人格権侵害)を受ける女性の気持ちに思いが至らない男性
の感性の問題である。

人格を否定された弱者の心情を理解せず、そういう者を守るために一定の時間帯だけ男性たち
にホームの上を少し歩いてほしい……と要求されることに本気で立腹する男性の心情が、同じ
男性である私にも理解できない。それは、性別を超えた、他者に対する優しさの欠如の問題なの
であろうか?

[著者略歴]
小林節(こばやし せつ)
1949年生まれ、慶応大法学部卒、慶応大名誉教授(憲法学)、弁護士(芝綜合法律事務所)