(>>124のつづき)

映画に対する評価は、ポジティブな意見が多くを占めました。あるフェミニストの女性は、
「男性も女性も互いの立場に立って声を上げ、どうしたら平等社会にしていけるかを追求
していかなくては」とコメントを残されました。Cassie Jaye 監督の、どちらか一方に肩
入れしない、困難な状況にある人全てに共感する視点が、来場者の心に等しく響いたので
はないかと考えられます。

マスキュリストとフェミニストがそれぞれの権利を主張する姿には、「人間的に皆おもし
ろそうな人達ばかり」といった意見の一方、「なぜあそこまでレッテルをはりきって批判
できるのか」「男性対女性という対立構造にしてはいけない」といった声もありました。

各会場での上映後、来場者の方を交えた座談会も、熱気に包まれて開催されました。久米
泰介さん、味沢道明さん、重松朋宏さんといった多彩なゲストを迎え、どの会場でも人が
入りきれないほどの大入り満員となりました。

最終回の御茶ノ水では、離婚問題に長年取り組んでこられた弁護士の後藤富士子さん、古
賀礼子さんらが日本の未来に向けた熱いメッセージを述べ、会場から拍手が巻き起こりま
した。

多くの方が印象に残ったエピソードに挙げたのが、DVに関するくだりです。妻から性的
虐待を受けた男性が、「男だって被害を受けている」と涙ながらに打ち明けます。監督の
キャシーは、DV被害者の男女の数にはあまり差がないのに、男性を受け入れるDVシェルタ
ーが圧倒的に少ないことに疑問を呈します。さらに、世界初のDVシェルター創始者である
活動家のエリン・ピジーは、「ほとんどのDVは相互作用」「まれに一方的な被害者もいる
けど」「男性だけ、女性だけの問題ではない」と、また別の視点を提示します。

米国におけるDV を巡る不平等は日本以上に深刻らしいことは、皆さんから驚きをもって
受け止められたようです。中でもエリンのメッセージは、虚偽DV が社会問題化し、DVの
事実認定を厳格化すべきだといった論調もある我が国において、忘れてはならない視点で
はないかと感じます。