おはようございます、金曜日です。

人間ってのは、どうやってもうまく理解できないことに囲まれて生きております。
国家や社会は、不条理/不合理を個人に押しつけ見捨てることがあるし、
そもそも地球が人間のことを屁とも思わず、
思えば過去の記憶の中にも理解不能な謎があるし、
身近な人のなかにも、自分のなかにもある。

人間は普段に、そういう「謎」と向き合いながら生きている。
ウィニコットという心理学者は、それが赤ん坊の頃から人間に課されているのだと言います。
赤ちゃんは、自分の欲求が満たされている状態だと、なにも考えない。
つまりそこに「自分以外の他者」がいるとは考えない
しかし母親がお乳をくれなかったり排せつ物を片付けてくれないと、
まるで世界から迫害されたように感じ、やみくもに攻撃性を外に向け泣きわめき暴れる。
世界すべてを消えてしまえとばかりに全力で破壊衝動を外部に向ける。

母親はそういう赤ちゃんの攻撃性をすべてうけとめ、
それに報復することもなく、罰も与えず、拒絶もせず、柔らかく受けとめる。
赤ちゃんの攻撃を母親は「生き残る」。
万能感に支配された自分(フロイトはこういう赤ん坊の状態を「赤ちゃん陛下」といいます)が
まったくかなわない相手を赤ん坊は見つけ、それを「母親」という他者だと認識する。
母親は自分を庇護し、慈愛を向け、同時に自分の力が及ばない絶対的な存在として赤ちゃんの世界に現れてくる。

ウィニコットはこういう赤ちゃんの心理を「対象の破壊と生き残り」と表現しました。
人間は破壊衝動のなかから生まれ、どうにもならないことを知って、
自分以外の誰かが存在することを悟る。
すでに最初から、自分以外の誰かは「謎」として提示されるわけでふ。