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アネ★兄のタオルケットじゃないと眠れない妹の話★モネ

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垢版 |
2019/08/15(木) 22:59:18.10
前スレ

アネ★「妹変換メガネ」をかけて巣鴨を歩く男の話★モネ
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2019/08/20(火) 00:11:55.32
読んだ本。


『ギリシァ悲劇を読む -ソポクレス『ピロクテテス』にみる教育劇-』
(吉田敦彦 / 青土社 / 2007)
2019/08/20(火) 00:12:10.71
神話学者で有名な吉田せんせいのソポクレース『ピロクテーテース』の私訳がメイン。
なにか目が覚めるような分析があるわけではなく、
あくまで吉田せんせいの翻訳した『ピロクテーテース』に、
せんせいの補足的説明をつけて供したもの。

うーん、古代ギリシア語やギリシア古典劇の専門家からすると、
この訳はどうなんだろうかって思いはするけど、読みやすくはある。
あと副題にはひっかかる。
たしかに『ピロクテーテース』は、オデュッセウスがネオプトレモスに教育を施す話ではあるが、
結局、それは失敗するのであって、教育劇とは言えないのではないかと思う。

(オレはこの本を副題に魅かれて買ったのだが、結局、
吉田せんせいもこれが教育劇であるとまでは断言していない。
編集者が添えたものなんだろうか)

トロイア遠征の途上、神罰によって足にけがをした弓の名手ピロクテーテースは、
足手まといだと判断され、オデュッセウスの奸計によってレームノス島に置き去りにされる。
しかしトロイア攻略は至難であり、10年経ってもいまだ戦争は終わらない。
神託によってピロクテーテースが戦争を終わらせるために必要だとわかり、
オデュッセウスは彼を迎えに行かなければならなくなる。
しかしピロクテーテースは、自分を罠にはめたオデュッセウスを大変憎んでいる。
2019/08/20(火) 00:16:40.07
そこでオデュッセウスは、ネオプトレモスという純真な青年を駒にする。
ネオプトレモスに策を授け、自分は背後に隠れつつ、ピロクテーテースをからめ捕ろうとするのだ。
が、ネオプトレモスはまっすぐな心根の青年で、嘘をつくのが耐えられない。
ピロクテーテースの困難な状況を、悲惨を目にした彼は、
彼に同情し、彼のためにオデュッセウスにたてつく。

老いたピロクテーテースと少年のようなネオプトレモスが友誼を交わし、
ピロクテーテースの故国へふたりで赴こうとするところで、
デウス・エクス・マキーナー(つじつま合わせの機械仕掛けの神)であるヘーラクレースが登場。
神意をピロクテーテースに伝え、ネオプトレモスとともにトロイアへ向かわせ、話が終わる。
2019/08/20(火) 00:19:54.74
オレもこのソポクレースが87歳の時に書いた『ピロクテーテース』がとても好きで、
何度も読み返してしまう。

まずネオプトレモスがカワイイ。
とにかく純真でまっすぐで、嘘をつけない。
弱い者には優しく、不正を為す者相手なら、たとえ味方であっても剣をかわすことを避けない。
オデュッセウスはそんなネオプトレモスを小童使いするけれど、
結局、神すら彼の純真を評価する。

物語の最後にヘーラクレースは、
「戦功を上げるときも、神を敬い、決して逸脱した行いはしないように」と忠告する。
が、こんなにも愛らしいネオプトレモスは、その後の神話においては、
戦争の最終盤にトロイアの老王を情け容赦なく斬殺し、
トロイア王家の血筋を絶やすため幼い幼児スカマンドリオスを高い塔から投げ捨てる。
そんな残虐な振舞いをしてしまったせいで、彼は神の怒りを買い、
悲惨な死を遂げてしまう。
2019/08/20(火) 00:24:23.08
ピロクテーテースは神罰で足を毒蛇にかまれ、すでに10年ものあいだ苦しんでいる。
白目をむいてうわごとを言ってぶっ倒れ意識を失うほどの痛みに苛まれている。
足は膿み、腐り、常に悪臭を放っている。

トロイアに行けば、そこの医師が自分の足を治してくれたうえ、
そこで為す戦功によって大英雄になるのが神意であることもわかってはいる。
しかし、自分を置き去りにしたオデュッセウスやアガメムノーンが憎くてたまらない。
絶対に彼らには膝を屈しないと心に決めている。
いかに神意であろうと運命であろうと、これからこの傷が死ぬまで自分を責めるのだとしても、
それでも彼はトロイアに行くことを拒絶する。

このかたくなさ、苦難を承知で運命に逆らおうとする屹立した人間像は、
ソポクレースの遺作『コロノスのオイディプス』にも匹敵する。
彼は悪臭を放つ乞食のような格好をしながらも、たいへん強く人間らしい。
これまたオレの大好きなタイプの人間だ。
2019/08/20(火) 00:33:51.22
オデュッセウスのほうは現実主義者であり、官僚主義的であり、小悪党であり、
まるでがちなオレの姿を見るようで笑える。
彼は不正をピロクテーテースに問い詰められても、
ぼろぼろに原始人化してる彼を鼻で笑いながらこう言う。

 私はその時々の必要に応じて、適切に振舞うことができる人間だ。
 正しく廉潔な士を選ばねばならぬ場面では、
 私より敬神の念の篤い者を見つけることはできないだろう。
 ともかく何をするときにも、いったん為そうとしたことはやり遂げないと気のすまぬのが、
 持って生まれた私の性分なのだ。
 だがお前のことだけは、話が別だ。
 お前に対してだけは私は計画した通りにすることを、
 自分から進んであきらめることにしよう。

こんなのに敬ってもらっても、神さまは嬉しくないと思う。
とまれ、とにかく彼はこう言って、
ピロクテーテースの弓(この弓から放たれた矢は精密誘導ミサイルみたいに百発百中である)を奪い、
無人島に置き去りにしようとする。

まじかっけーわ、オデュッセウス。
いくらオデュッセウスでも、10年無人島に居て、足がどろどろに腐ってるじいちゃんを見て、
ちっとは心が動かないわけはないと思う。
しかし上司(アガメムノーン)と組織(ギリシア軍)にどこまでも忠実、
いざとなったら情など完全に捨てきってしまうその姿は、まことに社畜の鑑じゃないかとさえ思う。
2019/08/20(火) 00:36:14.64
『ピロクテーテース』はとにかく傑作。
デウス・エクス・マキーナー出しちゃうギリシア悲劇は物語として破綻してるとか
そういう現代の視点で読んではいけない。

吉田せんせいのこの本が良書であるかは別として、
ソポクレースが渾身で書いたこの戯曲は読まれてほしい。
ちくま文庫の『ギリシア悲劇集』にも収載されてるので。
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