広島新交通システム橋桁落下事故の奇妙な話

あの日、事故現場の近くを遠足帰りの幼稚園児を乗せたバスが走っていた。
バスは事故のあった道路を通過する予定で、このまま走っていれば事故に巻き込まれてもおかしくないタイミングで走っていた。

ところが園児の一人が「おしっこしたい。」と言い出した。
「もうちょっとだから我慢しようね」と先生もなだめたのだが、どうしてもしたいという。
仕方なくバスは近くのパチンコ屋に寄って、そこでトイレを借りて用を済ませた。
そして出発して間もなく、あの事故が起こった。
あの園児のおかげか、現場を通過する時間が本来の計画とズレたために事故に巻き込まれずに済んだのだ。

この話を聞き、テレビ局がその園児にインタビューをしようと訪れた。
放送当時はその元園児たちは小学生になっていたものの、みんなその出来事は覚えているが、「おしっこしたい」と言い出したのは誰だったのか、それが思い出せない。
「あれ、誰だったっけ?」

何人もの元園児や先生に聞いてもあやふやな返事ばかりだったが、最終的に二人の名前が上がった。
しかしよく調べてみると、そのうちの一人は当日風邪を引いて遠足を休んでいた。
実際、遠足の時に撮った記念写真にその子は写っていない。
そしてもう一人は遠足の前に転校しており、この子も遠足には参加していなかった。

みんなが思い出した二人の園児は、両方ともその日にいなかった子だったのだ。