かくて軍事マニア少年は護憲音頭に加わった…(ジャーナリスト・三品純 月刊正論10月号)

 先の参院選も終盤の頃、護憲派を自負する社民党、共産党、各諸派の間で「宮崎さんが護憲を訴える記事を出した」と
こんな話題が巻き起こった。
スタジオジブリが発行している小冊子『熱風』7月号の「特集 憲法改正」に、
宮崎自ら「憲法を変えるなどもってのほか」と題する記事を執筆し、それが護憲村の住民達の耳目を引きつけたのだ。

 同社は「特集 憲法改正」号を先の参院選直前の7月18日にインターネットで配信。
すると瞬く間に記事が拡散されていった。

 宮崎氏の記事が注目された理由として、2つの背景が考えられる。
1つはその頃、参院選の争点として九六条改正など憲法の論議が盛んだったことだ。
祭りに参加した“9条真理教徒”たちからすれば「あの宮崎駿さんも護憲派だ」ということで歓喜したことであろう。

そしてもう1つ、宮崎氏が監督を務めた『風立ちぬ』が同時期に全国公開された点も見逃せない。
本作は、零式艦上戦闘機いわゆる「ゼロ戦」の開発者である航空技術者、堀越二郎の活躍を描いたものだ。

 もし宮崎氏が記事で護憲、平和と踊っているだけならば祭りの一風景で済んだ話だった。
しかし同時にゼロ戦の開発者である堀越を描いたことで9条真理教徒の反応は複雑になった。

つまり『風立ちぬ』でゼロ戦開発者を描くことが軍国賛美であると批判する声も上がったのだ。
また予想通りの反応だが、反日の態度を取り続ける韓国では『風立ちぬ』が「戦争美化」の「右翼映画」だとして、
同国内の公開中止を求める声も強まった。

 こうした言いがかりも含め一連の反応を検証すると「宮崎駿」という個人、
そして護憲派や文化人という人々の偽善性と胡散臭さを感じざるを得ないのだ。