これが日本の近未来
https://news.yahoo.co.jp/feature/844
野嶋剛(のじま・つよし)
ジャーナリスト。1968年生まれ。1992年朝日新聞社入社後、
シンガポール支局長、政治部、台北支局長、国際編集部次長、AERA編集部などを経て、
2016年4月からフリーに。中国、台湾、香港、東南アジアの問題を中心に活発な執筆活動を行っている。
最新刊に『故宮物語』(勉誠出版、2016年5月)、『台湾とは何か』(ちくま新書、2016年5月)。

「長時間労働や休暇不足の問題は深刻です。
私たちは『大根一本に一つの穴』と呼んでいるのですが、
いい雇い主に当たるかどうか、運試しのようなもの。
外国人は労働基準法の適用外。雇い主と本人との民事の契約問題になって、
言葉もわからない外国人の立場はどうしても弱くなるんです」
議論なく一気に進んだ外国人の導入
台湾の単純労働の外国人受け入れは1991年に始まった。当時は経済成長が進み、GDPが上がって都市化が進み、
伝統的な大家族から核家族化が進んでいく過程にあり、国民的な議論もないまま、
外国人労働力の導入が急速に広がった。

台湾社会特有の事情も外国人による介護を加速させた。台湾の高齢者は「安養院」と
呼ばれる老人ホームに入ることを強く拒む傾向があるという。
NPO桃園市群衆服務協会のソーシャルワーカーで、
長年外国人労働者問題に取り組んできた杜光宇(ドゥ・クワンユー)さんは、
こう分析する。

「親をホームに入れようとしたら『私は一生かけて苦労してお前を育ててきたのに、いまは私の面倒をみないなんて、それでも人と言えるのか』って文句を言われるのです。
台湾では親不孝と言われるのが子供は一番キツイ。
親と子が個として分離している欧米との違いはそこにあります」
台湾は儒教の国。儒教の観念では「不孝」が最大の罪。
台湾の医療でも延命重視であり、高齢者は平均8年を病院で過ごすとの統計もある。
子供にも仕事や家庭があり、親のほうまで手が回らないので、
親が希望する家庭介護のために外国人に頼ることになる。