「一発やっかぁ」
届いた小包の包装紙を夢中で破き、中からB5大の箱を取り出した。
既にカッターを濡らし、俺の剣先はビニールをちりちりと切り立てて行く。
体を横にしてリラックスすると、箱を持ち上げて、Elfの顔の表紙がそこにあった。
「2ヶ月に1回のGameCard注文だぜ」声に出していう。「男はやっぱりGameCard払い」
やおら箱の頭から、ズルムケ状態のボール紙を引き出し、Blizの宣伝チラシとGamecardを取り出す。
「んんッ、んんんッ」顔に内装のボール紙を押し当てる。
「この香りたまんねぇ」扱きに合わせて、顔を上下させる。
「やっぱり洋ゲーといえばこれだよ」満面の笑みで芳醇な匂いを吸い込む。
「スッ、スッ、スッ、スッ」顔から熱くなり、やがて頭の中が真っ白になる。「更新、更新」「期限の更新」
頃合いをみてGameCardを手に取る。俺はこの瞬間が好きだ。
芳醇な香りが鼻に残り、ぶらぶらの巾着袋の中から1円玉を取り出し、
腰を振り、左手でGameCardを押さえ、右手でヌルヌルとスクラッチ部分を扱く。
部屋の中の俺は、日本一のただの変態に成り下がっていた。
「ちきしょう誰かに見せてやりテェよ」最高潮が近付くと、いつもそう思った。
箱の香りをもう一度吸い込み、スクラッチのかすを手で払うと、支払いへ向かってまっしぐらだ。
「更新してやる」「2月に1回のほんまもんの更新」
「うりゃ、そりゃ」「ズリュッ、ブチュッ」汗を飛ばしながら、クライマックスをめざす。
「たまんねぇよ」身体の奥から、激しいうねりが起こった。やがて奔流となり俺を悩ます。
-更新してえ- -もっとスクラッチしてえ-相反する気持ちがせめぎあい、俺は崖っぷちに立つ。
「きたっ」俺はPCの前に腰掛け、支払いに備える。奔流は堰を切ろうとしていた。
「Consequences for Account: Account Cancellation」「ぶちっ」
想像と裏腹に、アカウントは既にキャンセルされていたのだ。
真っ白い時間が過ぎ、目の前が現実に戻る。