セカンドライフのようなIMとチャットのみを使用して行うコミュニケーションとリアル世界のコミュニケーションの違いは大きくは視覚的にコミュニケーションを行う相手の情報を得られない部分にある

リアル世界では第一に表情また姿勢や態度から相手に対してより深い理解を行いながら相互的にコミュニケーションを行っておりこれが円滑なコミュニケーションを行うための鍵となっている

セカンドライフではこのような視覚情報が一切得られずそれらの情報を抜きにコミュニケーションが行われるのだ

つまりセカンドライフにおけるコミュニケーションとリアル世界におけるコミュニケーションはこの点について大きく異なり異質である

当初からこの違いは指摘されており視覚的情報抜きにどう仮想世界特有のコミュニケーションで成立するものかサービス開始時から疑問視され注目されてきた

昨年NHKのメンタルヘルス番組でセカンドライフが取り上げられリアル社会に適応困難なASDがセカンドライフで豊かな共感性をもってコミュニケーションしている事が示されたのは記憶に新しいだろう

しかしセカンドライフでDJ活動をしているラリーはリアル社会に適応困難であった

リアル社会に適応困難な彼がなぜセカンドライフでは適応できたのだろうか?

それはセカンドライフのコミュニケーションとリアル社会のコミュニケーションが異なるからである

ASDのみならず発達障害を含む広義の精神障害者は共感性に乏しく周囲と上手く関係を築く事ができないケースが多い

これは大脳の前頭前野の発達に障害があるケースが多いからである

セカンドライフのコミュニケーションはこの前頭前野をそれほど酷使せずにコミュニケーションできるIMやボイスを利用してコミュニケーションする

これがセカンドライフで精神障害者のコミュニケーション能力を発揮させるために重要なベースとなる

IMであれば十分に熟慮してから応答する事が可能であるがリアルコミュニケーションでは即時的な対応が求められる

つまりセカンドライフではIMとボイスのみを使用した簡単なコミュニケーションで仮想的な人間関係を築くことが可能な訳だ

リアル社会の適応に困難なものでも比較的容易に適応しやすいため精神障害者にとってセカンドライフは居心地が良く離れられないものとなる

しかしながらそのようなコミュニケーション能力ではリアル社会におけるより複雑なコミュニケーションは不可能だ

よってセカンドライフにおけるコミュ力とリアル社会におけるコミュ力は同列には論じる事ができないものである

これはセカンドライフに依存する者にとって受け入れがたい事実であるが実際にリアル社会に適応しようとしたときここで述べた理由を痛感する事になるだろう

セカンドライフにおけるコミュ力とはこのようなものでリアル社会に適応するためのリハビリ程度にしか機能しないものなのである