<喪男の親>

 母親は世間知らずであるがゆえ、子に非現実的な教育をして
常識はずれで仲間はずれな息子を作る。

父親は育児はせず日々を遊び歩いて午前様。
たまに息子と話すとすれば自慢話と武勇伝。

そんな父親の愚痴こぼす母親。聞き役はいつも息子。
それがいずれ母親の一番のストレス解消法となる。

父親から本来教えてもらうはずの男の生き様や尊厳の代わりに
母親からの愚痴によって男の残酷さや無配慮さを言い聞かされる。

無力で無欲で優しい息子はその言葉をこころに刻む。

母親は言う 「私のような人生になってはいけない」と
母親は言う 「あなたには幸せになってほしい」と
母親は言う 「女に優しい男になれ」と
母親は言う 「男は所詮クズなのだと」と

そして息子は男であることをやめてしまう。
力は弱く、聞きわけの良い息子は、正しく公平で幸せな人生を過ごそうと頑張る。

しかし、時すでに遅し
常識や知力が他者よりも遅れてしまった息子に挽回の機会は乏しく
運動能力や積極性は母親にその芽を潰されてしまった。

公平を重んじるがゆえに他者に出し抜かれ、正しくあろうと思うがゆえに敬遠される。

親切にすれば誰かの邪魔となり、
控えめに行動すればよく分からない人と言われる。
口を開けば、会話力の無さゆえに誤解され
頭を使って行動すれば、常識や認識の甘さゆえに失敗ばかりを繰り返す。

仕事をすれば安全重視の考え方が他者にはやる気の無さに見れ
効率よく作業を進めようと努力すると、ミスの多さに皆は呆れる。

そして彼は何もすべきではないと理解する。
誰とも話すべきでないと理解する。

俗にいう「喪男」の完成である。