『両家とも、あなた方2人の愛の力に屈したのです。
両家は、“そこまでして一緒になりたいのか。
我々も抗争を続けるのが馬鹿馬鹿しくなってきた”と
おっしゃり、約1ヶ月前に和解したのです。
ですから、もう元の土地に帰って来ても大丈夫ですよ。
むしろ、皆さん、孫の顔を見たがっています』
ヒジオとキノエットは涙まみれの顔になり、手を取り合って
喜んでいましたが、次の瞬間、
キノエットにまた陣痛の波が来ました。
『今、最優先ですべきことは元気な赤ちゃんを生むこと。
そして、赤ちゃんを生み終えたら、故郷に帰り、
元気な孫の顔を両親に見せたい』と痛みに耐えながら、
キノエットは言いました。
そして、数時間後、キノエットは夫・ヒジオ立会いの元、
分娩室に入りました。
『うぅぅぅぅぅぅん!!うぅぅぅぅぅぅぅぅん!!
ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!ヒッヒッフー!!』
出産を頑張るキノエットの声ばかりが産室に響き渡ります。
『頑張ってください!―赤ちゃんも頑張っていますよ!!
もう少しです!!』
妊婦を励ます医師と看護師の声も聞こえます。そして、次の瞬間―
『オギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
元気な赤ん坊の声がようやく産室に響き渡りました。
『おめでとうございます。元気な男の子ですよ』
看護師にそう告げられ、ヒジオとキノエットは満面の笑みです。
そして、その子は“ハニエル”と名付けられ、
ヒジオとキノエットは無事親子3人で故郷に帰り、
いつまでも幸せに暮らしましたとさ。 おしまい」
ー完ー