>>293 続き ※絵露有無:無

 と言い、彦星の頭をナデナデしました。
 それまで怯えていたのか、お腹の中で大人しくしていた赤ちゃんも
 犯人逮捕を祝福するかのようにお腹の中で動き回り出しました。
 織姫と彦星は動いているお腹を見ながら、
 にっこりと顔を見合わせました。
 そして、約2週間後、織姫の怪我に完治宣言が医者より出ました。
 織姫と彦星が手を取り合って喜んだ次の瞬間、織姫がお腹を押さえて
 苦しみ出しました。陣痛が始まったのです。怪我を診ていた医者は、
 『これからは産婦人科医の出番だな』と笑いました。
 織姫は苦しみに顔を歪めつつも、
 『これは怪我の痛みと違って、幸せな痛みだ』と言いました。
 彦星は、陣痛室で織姫が陣痛にのた打ち回っている間、
 ずっと絶えず織姫のお腹や背中をさすり続け、
 『僕は君を励ますことしか出来ない。無力な僕を許しておくれ』と
 言いました。すると、そのたびに織姫は彦星に
 『夫としてそばにいてくれるだけで嬉しいし、力になる』と言いました。
 約10時間後、織姫は分娩室に運び込まれ、分娩台で大股を開かされました。
 『陣痛が来た!いきんで!』医者から指示が飛ぶたびに、織姫は一生懸命いきみます。
 『うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!』
 ラマーズ法の呼吸といきみを繰り返す織姫に医者や看護師は
 『もう少し!もう少しだ!頭が見えてきたぞ!また、いきんで!!』と指示します。
 織姫が力いっぱいいきむと、次の瞬間、
 『おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
 元気な赤ちゃんの産声が産室中にこだましました。
 『おめでとうございます。お父さんにそっくりな男の子ですよ』
 生まれてすぐに体中を洗われ、キレイになったその赤ちゃんは
 “ハニエル”と名付けられました。
 織姫と彦星とハニエルは末永く幸せに暮らしましたとさ。   おしまい」

ー完ー