と言い、彦星の頭をナデナデしました。
それまで怯えていたのか、お腹の中で大人しくしていた赤ちゃんも
犯人逮捕を祝福するかのようにお腹の中で動き回り出しました。
織姫と彦星は動いているお腹を見ながら、
にっこりと顔を見合わせました。
そして、約2週間後、織姫の怪我に完治宣言が医者より出ました。
織姫と彦星が手を取り合って喜んだ次の瞬間、織姫がお腹を押さえて
苦しみ出しました。陣痛が始まったのです。怪我を診ていた医者は、
『これからは産婦人科医の出番だな』と笑いました。
織姫は苦しみに顔を歪めつつも、
『これは怪我の痛みと違って、幸せな痛みだ』と言いました。
彦星は、陣痛室で織姫が陣痛にのた打ち回っている間、
ずっと絶えず織姫のお腹や背中をさすり続け、
『僕は君を励ますことしか出来ない。無力な僕を許しておくれ』と
言いました。すると、そのたびに織姫は彦星に
『夫としてそばにいてくれるだけで嬉しいし、力になる』と言いました。
約10時間後、織姫は分娩室に運び込まれ、分娩台で大股を開かされました。
『陣痛が来た!いきんで!』医者から指示が飛ぶたびに、織姫は一生懸命いきみます。
『うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!』
ラマーズ法の呼吸といきみを繰り返す織姫に医者や看護師は
『もう少し!もう少しだ!頭が見えてきたぞ!また、いきんで!!』と指示します。
織姫が力いっぱいいきむと、次の瞬間、
『おぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
元気な赤ちゃんの産声が産室中にこだましました。
『おめでとうございます。お父さんにそっくりな男の子ですよ』
生まれてすぐに体中を洗われ、キレイになったその赤ちゃんは
“ハニエル”と名付けられました。
織姫と彦星とハニエルは末永く幸せに暮らしましたとさ。 おしまい」
ー完ー