伴野朗「暴露(スクープ)」(祥伝社ノンノベルス)★★☆
秋田市と思しき東北の町で新聞記者を勤める「俺」を主人公とした「野獣」シリーズの、主に1989〜90年
に発表された作品を収めた連作集。
「愉快犯」○、町の自動販売機に置かれたドリンク剤に毒が混入され、三人が相次いで死亡。「俺」は
無差別殺人ではなく、隠された真相があるのでは、と疑うが、被害者には何の繋がりも無かった・・・。
トリッキーなのは良いですが、短い枚数では伏線がバレバレだなあ。
「悪夢の殺人」○、就寝中に悪夢にうなされ、隣に寝ている妻を絞殺してしまった男。だが実は・・・。
これもトリッキーなんですが、フェアな描き方のため全て丸分かり。
「背負い地蔵」○、中学生が自殺を装って絞殺される。二人の容疑者はいずれも手をケガしており、被害
者を絞め殺すことは出来なかった・・・。J・D・カーや横溝の某作品にもあるトリックの、ローカルな
ネタが楽しい。
残りの「香水の罠」、「アル中の女」、「危険な心中」はいずれも出来が悪く、△。
巻末には番外編で、作者本人が「俺」に出会うという趣向の「バー『ヘレン』で」を収録。
全体的に、トリッキーな作品も多いのですが、枚数が短いところにフェアに伏線を張ったため、読者に
感づかれ易くなってしまったのが残念。