笹沢左保「悪魔岬」(光文社文庫)★★★☆
1977年、まだ岬シリーズは第一作の「他人岬」しかなく、「悪魔」シリーズも無かった頃に中絶した作品を、後年の
1985年に復活させ、「岬」「悪魔」両シリーズに跨る題名で発表した長編。
松平の婚約者・美紗は妻子ある男・三条と不倫の末、心中未遂、死体遺棄事件を起こし、松平は婚約解消、そし
て一年後、美紗は失踪し、十和田湖で水死体となって発見される。不倫相手の後追い自殺を図ったのか、だが
美紗の所持品が沖縄で起きた殺人事件の現場で見つかるなど、不可解な出来事が相次いで起こっていた。松平は
三条の未亡人・八千代とともに事件を追及するのだが・・・。
「悪魔」シリーズに書き換えたこともあって、官能シーンも濃厚。結末の「ドンデン返し」に期待したのですが、
なるほど、これはかなりの驚き。序盤の肝心の部分の描写はハッキリ言ってアンフェアだが、その真相を知る
人物のセリフはウソを言っていない。地の文はアンフェアだが、真相を知る人物のセリフはフェアというのは、
ちょっと珍しいかも。
但し、もう一つの事件との絡め方が、どうもアッサリ過ぎて、唐突な感じが否めないです。なお伏線については
可も無く不可も無く、といった出来栄えでしょうか。
傑作とは言い難いが、一読の価値はあるでしょう。