>>16
>内田さんの再説提唱が1年はやかったら

さあ? そこはかなり複雑なところ。
内田千鶴子の新史料発見は専門家の間でこそ話題になったものの、
マスコミ(TV、出版社)からはまったく相手にされていない。
たとえばNHKの『これが写楽だ(池田満寿夫推理ドキュメント)』で
内田説が紹介されているけれども
「なんでいまさらそんな話を蒸し返すんだ」
「研究者はつまんないことばかりを調べる」
と露骨にバカにした態度で、まるで余計なことをしやがってと
いわんばかりの酷評。
それに内田が写楽の本を出版するようになった(あるいは出版されてもらえるようになった)のは
10年も経ってから。時系列を考えると、明石散人の『東洲斎写楽はもういない』が
斎藤十郎兵衛説なのに支持を集めることができたから出版の企画がやっと通ったといえないこともない。
おまけに内田本の版元は小さい出版社ばかり。いわゆる大手は見向きもしていない。

これは余談だが、上記の『これが写楽だ』は島田荘司の小説ではえらく持ち上げられていたけれども、
正直いっていろいろひどい。
冒頭からNHKのスタッフが池田満寿夫を訪ねて、
NHK「池田先生が写楽の正体を突き止めるという企画を立てたんで、
オンエアまでに視聴者が納得するような新説を作ってください」
池田「・・・マジですか?」
ホントに↑こんな展開なんだぞ(呆然)。
実際に池田が書いたのは巻末の四分の一程度で、それまではずっとNHKの
スタッフが書いている。
池田の論の進め方が穏当な分、NHKのひどさが際立つことになって、結局、
東洲斎写楽の正体なんか本当はどうでもよくて、話題にするためマスコミが
よってたかって謎に仕立て上げていたんだということがよく伝わってくるわ。