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【ワッチョイ】叙述トリック考えた【少しはマシ】 [無断転載禁止]©2ch.net
0001名無しのオプ 転載ダメ©2ch.net (ワッチョイ 32c1-RHty)2016/07/17(日) 20:57:25.32ID:GsrF0xy/0
叙述トリックを思いついたら書き込むスレ
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0002 ◆ofBEG7PXAg (アークセー Sx3d-zRFJ)2016/07/18(月) 00:00:18.65ID:dl1yzlI3x
 霧の中を歩いていた私の目の前に、古城が現れた。
 思わず、驚きの言葉が漏れる。「この城か。
確かに、出そうな雰囲気だなあ」
 その時、後ろから声をかけられた。
「それ以上近づかないでください。危険ですよ」
「知ってます。幽霊が出るそうですね」
「ご存知でしたか。管理を任されてる私も
大弱りなんですよ。幽霊の噂が広まって以来、
沢山の人が押し掛けるようになって」
「へえ、それは大変ですね」
 私は、城を見つめたまま会話を続ける。
「私も、会ってみたいような怖いような……。
それで、どんな幽霊が出るんですか?」
「首がないそうです」
0003 ◆ofBEG7PXAg (アークセー Sx3d-zRFJ)2016/07/18(月) 00:02:52.35ID:dl1yzlI3x
「おお、それは恐ろしい」
「うかつに城の中へ入ってしまって、
首のない幽霊に追い掛け回された人も
いるんですよ」
「ほう、それはそれは……あれ?」
「どうしました?」
「今の話はおかしいなあ。
首がないということは、目もないということ
でしょう。どうやって追い掛け回すんだろう」
「ははあ、なるほど。首、つまり頭がなければ
目も耳も口もないわけですよね」
「そうそう、理屈に合わない」
「相手は幽霊です。理屈など通用しませんよ。
目がなくたって走れるし、口がなくても会話できます。
現に、あなたとこうして
おしゃべりしてるじゃないですか」

 城を見つめていた私は、慌てて振り返った。
 目の前に、男がいた。
 彼と、視線がぶつかる。……はずが、
ぶつからなかった。
0005名無しのオプ (アークセー Sx3d-zRFJ)2016/07/19(火) 00:05:19.49ID:Wy4Np2L7x
「看護婦さん、俺はいつまでここで寝てなきゃ
ならないんだ?」
「検査の結果を見て……」
「検査、検査か。この前、ありとあらゆる
数値は正常だときいたぞ。腹部エコーも
問題なし。順調なんだろ?」
「それは……」
「まあ確かに、最近腹が出てきたよ。
でも俺は、三十二歳だ。
病気というより、ただの中年太りだろ」
「……」
「だったら、俺に必要なのは病院じゃない。
フィットネスクラブだろ」
「わかりました。先生に相談してきます」

「……というわけで、俺が俺がなんです」
「なるほど。私たちの手には負えませんね。
今すぐ、精神科の先生に連絡をしましょう。
出産までに、『自分は男性だ』という
妄想を取り除いてあげないと」
0006名無しのオプ (ワッチョイ 32c1-RHty)2016/07/19(火) 22:45:02.64ID:9WGtEwSd0
>>5
二日、連続で作品を投稿とは、なんという創作意欲。
感服しました。
0007名無しのオプ (アークセー Sx8f-HacG)2016/07/22(金) 12:54:46.24ID:ZFGG6+L6x
また彼が来る。

くすんだ銀色の刃を握りしめて。
私の後に立ち、刃を研ぐ。
その音は私にも聞こえる。
時には、私の眼前で刃を振り回す。

私は、彼に金を渡す。
大金を渡すのだ。
それは必要な取引である。

彼は、いつも穏やかな表情である。
しかし、手には銀色の刃。

私は彼に大金を渡す。
しかし私は、彼を恐れてはいない。
必要な取引だから、金を渡すのだ。
彼を恐れてなどいない。本当だ。

私と彼の関係は
詳らかにはされてこなかった。
しかし、とうとう知られてしまった。
記事になってしまった。

http://news.livedoor.com/article/detail/11763362/
0008名無しのオプ (アークセー Sx69-SGFu)2016/07/29(金) 17:01:10.54ID:6XNjZUMXx
 カレンダーを見て気がついた。
そうか、今日が結婚記念日だったな。

 じゃあ、どうしようかな。
まさか、家でいつも通りのディナーというのはね。
 どこかへ出かけよう、うん。
車? 電車? まさか、ヨット?
俺、運転は無理だから、電車だな。
 電車に乗って、シティーへ行って、
映画なんかどうだろう。うん、それがいい。

 俺は、ポケットの小銭を確かめた。
 シティーへ行って映画を楽しむくらいは
できるな。よし。


「もしもし、警察です。落ち着いて聞いて下さい。
まず、お子さんは無事です。一人でいたところを
シティーで保護しました。我々が事情を聞いたら、
家出や失踪ではありませんでした。
今日が結婚記念日のパパとママを
二人きりにしてあげたかっただけだそうですよ」
0009名無しのオプ (ワッチョイ b25b-xLev)2016/07/30(土) 03:02:04.92ID:0v0Sz2R20
職業心霊研究家の私がまさかこんなことに・・・

今日私が訪れたのはネットで評判の出るという物件
外観は至って普通。
廃屋・・・空き家だとは思えない感じ
まるで映画「呪怨」の貞子が出る家のように普通。
チャイムを押してみた。
電気が来てないのか鳴ってる様子がない。
門は・・・開いていた。
入ってみる
入口のドアは・・・ここも開いてる・・・。
入ってみる
さあ探索開始
気味が悪いが仕事で数々の廃屋を見てきた私にとっては庭みたいなもの
私自身の肉眼では見えないのでこのデバイスを通して・・・
!?  いた!!!さあ!捕獲開始だ!
?アリティーSランクのカメックス!
ゲッチュだぜ!
職業心霊研究科の私がまさかこんなことに・・・ポケモンGOにハマるとは
0010名無しのオプ (アークセー Sx69-SGFu)2016/08/02(火) 19:18:32.08ID:Xj55evVzx
「ああ、私の手が赤い。血の汚れが落ちない。
私の手についた血の汚れが落ちない」
「おばさん。まずはその
赤いサングラスを外してみようか」
0011名無しのオプ (アークセー Sx8d-cO1t)2016/08/17(水) 15:24:15.79ID:dHOZnfn6x
「純さん、純さんはどこ?」
「僕はここにいるよ、薫」
「わたし、不安なの。手術するのが怖い」
「大丈夫だよ、なにも心配ない」
「でも、わたしは難しい病気なんでしょう?
お医者さまが何人も来て、調べているようなの」
「薫が美しいから、大勢が興味津々で
眺めてるだけさ。……まさか、セクハラなんか
されてないよね?」
「わからない……。純さん、ずっとここにいてね」
「もちろんさ。薫のそばにいるよ」

 僕は薫の両手を握りしめ、
薫が手術室へ連れて行かれるまで
言葉で励まし続けた。
0012名無しのオプ (アークセー Sx8d-cO1t)2016/08/17(水) 15:29:21.71ID:dHOZnfn6x
 手術のかいなく、薫が天に召されて数日後。
弁護士事務所から鈴木と名乗る若い男が来た。
 薫は、亡くなったご両親からかなりの額の
財産を受け継いでいたらしい。鈴木氏は、
僕の顔をチラチラ見ながら説明する。
「薫さまの御意志では、その財産を
純さまに相続していただきたいと……」
「へえ、そうですか。でも、興味ないですね。
僕には、薫との思い出があればいい。
財産とやらは、どこかへ寄付でもして下さい」
「それでよろしければ」
「ところで鈴木さん、さっきから僕の顔を
チラチラ見てますね」
「あ、これは失礼」
「あなたは、こう考えているんでしょう。
『なんで、こんなブサイクな男が資産家の
ご令嬢と付き合えたんだろう?』って」
「……すみません」
「簡単なことですよ。
彼女は、病気の影響で目が見えなかったんです」
0013 ◆ofBEG7PXAg (ワッチョイ eb7b-yfQ4)2016/12/09(金) 12:06:25.24ID:MXiuMvNp0
「ミステリーを書くんだって?」
「まあね。医者の仕事は意外と金にならなくてさ。
推理小説を投稿して小遣い稼ぎってわけ。
親父がアル中になったりして、ずっと貧乏なんだよ」
「大変だな」
「作品が売れればいいんだけどね」
「ミステリーってことは、密室で
殺人事件が起きて……とか?」
「そうそれ。でもね。密室のトリックなんか
どれも前例がありそうで、手を出せない」
「じゃあ、どうするんだよ」
「叙述トリックを検討してる」
「叙述トリック?」
「文章そのものに罠を仕込む小説だよ。
結末で『実はこの人、女性でした』と明かすような。
これなら大量生産ができる」
「なにそれ。意味がわからない」
「密室のトリックは数が限られるんだ。結局、
ドアに仕掛けを施すか、窓に仕掛けを施すか……
くらいでさ」
「まあ、そうだね」
0014名無しのオプ (ワッチョイ eb7b-yfQ4)2016/12/09(金) 12:10:15.25ID:MXiuMvNp0
「でも、叙述トリックは、何かひとつ、
結末に驚きがあれば作品になるんだよ。
実はこの人女性でした、この人子供でした、
この人はそもそも人ですらありませんでした……」
「うわ、なんだよ。まじめに読んでて
そんなオチだと腹が立つぜ、自分なら」
「そうか」
「やめておけよ。そういうのは」
「じゃあ、やっぱり、探偵が登場して
密室の謎を解くとかそういう話にするべきかな」
「そうだよ、それがいい。きっと売れるよ」
「わかった。実はさ、探偵の名前だけは
考えてあるんだ」
「へえ、それは興味があるね。探偵の名前は?」
「シャーロック・ホームズ」
0017名無しのオプ (ガラプー KK79-JlMQ)2017/07/05(水) 00:51:02.96ID:B2d8s2SJK
>>8
これは良いね
0018名無しのオプ (ワッチョイ 5f6f-zrUr)2017/09/12(火) 11:16:05.50ID:4E+UggSv0
「あまり怖くないですね、刺激が足りない」
「うむ。退屈なくらいだな。ということでひとつ、
退屈しのぎに講義をしよう」
「講義? いきなり何を言い出すんですか」
「我々は法学部の学生ではないか。
デートの最中だろうが何だろうが、
法律について真面目に講義し、考察するぞ」
「はい、……うふふ」
「では、乗り物について考える。
人を乗せて『Aの場所』から『Bの場所』へ
移動し、報酬を受け取るという行為には、
法律の厳しい制限がある」
「わざと難しく言ってますけど、
タクシーやバスのことですよね」
「電車や飛行機もそうだ。制限や、
特殊な免許などが必要になる。しかし、
その制限をすり抜ける方法がある」
「え?」
「要は、スタート地点とゴール地点が
同じであればいい。人を乗せて『Aの場所』を出発し、
『Aの場所』へ戻るのだ。そうすると、
法律の制限は驚くほど緩くなる」
「そんな乗り物が……ありましたね。今乗ってる」
「そう。スピードももっと出せるはずなんだ。しかし、怖くないな」
「まあ、子供向けですから。あ、そろそろ『Aの場所』ですよ」

二人の学生と大勢の子供たちを乗せたジェットコースターは、
ゆっくりゆっくりスタート地点に戻ろうとしていた。
0019名無しのオプ (ワッチョイ 135b-eZZX)2017/10/26(木) 07:53:59.71ID:8zHqKfUE0
折原一
新作
「三つ子」
0020 ◆ofBEG7PXAg (ワッチョイ ae8a-nyWf)2017/11/22(水) 18:55:35.33ID:Tp/3qRTI0
  私は壊れてしまった。

  完成させるべき物語が、残すべき文字があるのに。
  ああ、それが、なんということだ。
  私は、私自身にしか理解できない文字を残そうとしている。

  そうじゃない。私は完成させるべきだ。
  完成させるべきなんだ。小説を。物語を。
  小説は、私の中で完成しているのだ。
  細部までできあがっている。それなのに。
  今すぐ文字で残すのだ。作品を、小説を。
  文字を文字を文字を文字
0021名無しのオプ (ワッチョイ ae8a-nyWf)2017/11/22(水) 18:58:09.34ID:Tp/3qRTI0
「噂で聞いたぞ。お前、小説を書いてるんだって?」
「来月締め切りの文学賞に応募するつもりなんだ」
「お前に小説が書けるのかよ」
「なんだ、疑ってるのか」
「だって、お前は根っからの理系じゃん。
小説や文学の素養なんか無いだろ」
「そうじゃないんだな。応募するのは俺だけど、
小説を書くのは俺じゃない」
「……盗作か剽窃でもするつもりか?」
「違う違う。このチラシを見ろよ」
「星新一賞?」
「そこの応募規定にあるだろ」

『人工知能の作品も受け付けます』

「……はぁ? 人工知能の作品だと?」
「つまりだ。小説を書くのは人工知能。
応募するのは俺。賞金が出たら、もちろん俺のもの」
「虫のいい話だな」
「ははは。でもね、肝心の人工知能が壊れちまったよ」


  今すぐ文字で残すのだ。作品を、小説を。
  文字を文字を文字を文字
0022 ◆ofBEG7PXAg (ワッチョイ d68a-uQ+S)2017/12/14(木) 17:18:37.18ID:xQC5X8iN0
 殺人現場の部屋に入った瞬間、圧迫感で
目がくらみそうになった。
 ドアや壁はかなりの厚みがありそうで、
悲鳴など誰にも聞こえなかっただろう。
 私の背後で、ドアがゆっくり閉まる。
 殺風景な部屋を見渡した。
死体が運び出された以上、見るべきものといえば
ドアと窓くらいか? まず、窓に近づいてみる。
窓の鍵は、旧式だが頑丈そうだ。
そして、窓のむこうは鉄格子になっている。
防犯のためだろうが、なんとも厳重なことだ。
そして、ドアを確認する。……おや? 開かない。
まさか、このドアはオートロックだったのか。
私は鍵など持ってないぞ。
もしかして、私は閉じ込められてしまったのか?

 しばらく考えたが、結論はひとつだ。

 しかたない、服が汚れてしまうが、
あの暖炉の煙突から外へ出よう。
0023名無しのオプ (ワッチョイ d68a-uQ+S)2017/12/14(木) 17:20:35.88ID:xQC5X8iN0
「ええ、なんだこれ。卑怯だぞ」
「やっぱり?」
「一行目に『圧迫感』と書いてあるあたりが酷い。
いかにも密室殺人事件のようなフリをしておいて、
実は煙突から外に出られますってことだろ。
叙述トリックとはいえ、これでいいのか?」
「編集部の人は、パロディとして
アリだといってくれたよ。まあ、いまどき新しい
密室トリックなんてないんだし」
「ないのかよ、新しい密室トリック」
「密室のトリックは数が限られるんだ。結局、
ドアに仕掛けを施すか、窓に仕掛けを施すか……
くらいでさ」
「まあ、そうだね」
0024名無しのオプ (ワッチョイ d68a-uQ+S)2017/12/14(木) 17:23:16.89ID:xQC5X8iN0
「でも、叙述トリックは、何かひとつ、
結末に驚きがあれば作品になるんだよ。
実は煙突がありました。実は天井がありませんでした、
そもそもこの部屋から殺人犯は出ていませんでした……」
「うわ、なんだよ。まじめに読んでて
そんなオチだと腹が立つぜ、自分なら」
「そんなオチの短編をいくつか書く予定なんだけど、
ダメかな」
「せめてさ、作中のどこかに断り書きを入れよう。
『この作品はアンフェアです』って」
「なるほど」
「いや、いっそのこと、タイトルにも
アンフェアという単語を入れるべきだ」
「わかった。実はさ、探偵の名前だけは
考えてあるんだ」
「へえ、それは興味があるね。探偵の名前は?」
「天下一大五郎」
0025名無しのオプ (ワッチョイ 6f6b-615/)2017/12/21(木) 21:01:22.73ID:95rxgVhg0
3年1組のケンちゃんが下宿先の302号室で自殺して遺体となって発見された。
直ちに友人関係が調べあげられ、特に仲の良かった4人の友人が判明した。
友人の名前はそれぞれ、田中、中山、山田、田崎
警察による事情徴収とともに取り調べが行われ、皆が次のように述べた

田中「あんまり一緒にいることは無かったが、他の3人よりも一番仲良しだとおもう。最近は会ってない」
中山「よく2人で飲みに行った。ケンは山田のことについて時々愚痴っていたな」
山田「ケンがよく遊んでいたのは田中だよ。オレは月に一回くらい会う程度。田崎も同じ」
田崎「仲が良かったのは事実だけど、結構イヤな思いもしていた。田中もそう言ってたのを聞いたことがある」

4人とも3年の同級生だが中山だけ2組なのでクラスが違っていた。
そして4人ともウソは付いていない様子
さて、誰が殺した?
0026名無しのオプ (ワッチョイ 6f6b-615/)2017/12/21(木) 21:01:57.42ID:95rxgVhg0
3年1組のケンちゃんが下宿先の302号室で自殺して遺体となって発見された。
直ちに友人関係が調べあげられ、特に仲の良かった4人の友人が判明した。
友人の名前はそれぞれ、田中、中山、山田、田崎
警察による事情徴収とともに取り調べが行われ、皆が次のように述べた

田中「あんまり一緒にいることは無かったが、他の3人よりも一番仲良しだとおもう。最近は会ってない」
中山「よく2人で飲みに行った。ケンは山田のことについて時々愚痴っていたな」
山田「ケンがよく遊んでいたのは田中だよ。オレは月に一回くらい会う程度。田崎も同じ」
田崎「仲が良かったのは事実だけど、結構イヤな思いもしていた。田中もそう言ってたのを聞いたことがある」

4人とも3年の同級生だが中山だけ2組なのでクラスが違っていた。
そして4人ともウソは付いていない様子
さて、誰が殺した?
0028名無しのオプ (ワッチョイ 6e8a-LlrR)2018/06/20(水) 11:51:53.83ID:4SIDEY5i0
(相談するべきだろうか)男は、心の中の悩みに
結論を出せないまま、病院を訪れた。
「こんにちは。健康診断でご予約ですか?」
受付にいた若い女が、明るい表情で問いかける。
「はい」男は小さな声で応える。
(相談するべきだろうか、いや、この人は
医者でもなんでもない、ただの案内係だ)
女は、男の悩みに気づかぬまま、
書類を用意する。「こちらをお持ちになって、
奥の部屋でお着替えをお願いします。まず身長と体重の計測です」
それからは、流れ作業である。身長を測り、
体脂肪率などもわかる特別な体重計に乗る。
そして、問診である。短髪の老人が白衣を着て
小部屋で待っていた。老人は男の顔を見るなり
「どうなさいました?」「え?」
「表情がすぐれません。お疲れのようですね」「ええ、まあ」
どうやら、心の中の懊悩が表情に出てしまったらしい。
(さすがは医者だな。この人に相談するべきだろうか)
老人は、怪訝な顔で聴診器を用意すると、男の胸に当てていく。
(こんな聴診器で何がわかるというのだろう)
やがて老人は、きっぱりと宣言した。「問題は無いですね」
(無い? 見ればわかるだろう。問題があるだろう。
気づかないのか、藪医者め)
そして、採血やレントゲン検査があり、男は受付に戻ってきた。
「結果は二週間後に郵送でお届けします」
若い女に明るい声で説明され、男は病院を出た。
そして呟く。「ああ、けっきょく相談できなかった」
病院のすぐそばに、黄色い看板のドラッグストアが
建っていた。男は、吸い寄せられるようにその店へ入っていく。
(そうだ、相談する前に試してみよう)

男はその店で、養毛剤を買った。
0029名無しのオプ (ワッチョイ 3d99-8hNE)2018/06/30(土) 02:38:14.02ID:yBWBrdMa0
『とある国の監獄にて』 1/2
ハァハァ、78……79……80……ハァハァ、81……
傷跡だらけの鍛え抜いた肉体。
隆起した筋肉に汗が流れ、冷たいコンクリートの床にポタポタと落ちる。
サムは黙々と腕立て伏せを続けていた。薄暗く狭い鉄格子の中で。
ここは、とある独裁国の監獄。
政治犯扱いされたサムは終身刑を言い渡され収監されていた。
まわりは窓1つ無いコンクリートの壁に囲まれ、簡易な二段ベッドが1つと奥に便器があるだけ。
ひんやりと冷たい鉄格子の前に顔を見せるのは定時に食事を運ぶ看守くらいなもの。
話し相手もおらず、ずっと一人房だったのだが、そこにまた一人、看守に連れられてきた新入りが入ることになった。
そいつは名前をアレックスといった。
アレックスは見るからに悪人面したふてぶてしい様相で、囚人服の襟元から蛇の刺青が覗いている。
でっぷりと太った大きな体格に腹が出て、やたらとその腹をさする。
サムもアレックスもお互いを意識しあい一言も言葉を交わすこともなく、鉄格子の中はイヤな沈黙が続いた。
その沈黙を破るように、そこに現れたのはあの看守ではなく、死神だった。
0030名無しのオプ (ワッチョイ 3d99-8hNE)2018/06/30(土) 02:39:59.61ID:yBWBrdMa0
『とある国の監獄にて』 2/2
鉄格子をすり抜けスーっと入ってきた死神は、二人に向かって、地獄の底から響くような声でこう言いだした。
「今夜、この中の一人を迎えに来る。その一人をお前達に決めさせてやろう。フフフ……」
そう言うと死神はまた鉄格子をすり抜けスーっと闇の中へ消えた。
覚悟は出来ていたはずのサムも、いざ死神を見ると怖じ気づいた。
「まだくたばるのは御免だ」するとアレックスも「同じだ」
しばらくの沈黙のあとで口を開いたのはアレックスだった。
「ここには三人の人間がいる。あんたも死にたくないようだからこうするしかない」
腹をさするアレックスを見てサムはようやく理解し頷いた。
翌朝、食事を運んできた看守がサムとアレックスの顔を鉄格子越しに眺め一言つぶやいた。
「昨晩、ここで何かあったのかしら?」
「べつに」と返すアレックス。
そしてサムとアレックスは生き延びることが出来たのである。
たとえそれが監獄の中の日々であろうとも。
0032名無しのオプ (ワッチョイ e22c-lCU2)2019/01/30(水) 03:00:15.19ID:RS7q7in40
>>30
代行のやつだろそれ
0033名無しのオプ (ワッチョイ cd25-tia7)2019/08/04(日) 11:07:02.59ID:XFqtiUPZ0
>>29
うまいなあ
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