戦前の本格は“トリックの種明かし”止まりで、手がかりの提示も、その準備段階作り止まりだったからなぁ
(「屋根裏」の目覚ましや「陰獣」の手袋のボタンみたいに“ロジック形成”のための手がかりもあったにせよ。
『殺人鬼』は“手がかり索引”の先駆的作品だけふど、やっぱり“トリックの種明かし”的印象の方が強い)。
『本陣』も基本は“トリックの種明かし”なんだけど、
都筑道夫が誉めている三本指の男の絡め方とか、
最後に明かされる『アクロイド』的記述とかは、
やっぱり戦前本格からの飛躍的進歩だった訳だし、
『本陣』を柱にした「宝石」の活況が後続に道を拓いたってこともあるから、
“新時代の象徴”的に評価されて来たんだな。
その世代の記憶が薄れるにつれて、ベスト選出の順位なんかも下がって来たんじゃなかろうか。