「謎の漢字ノート」

昭和40年7月、N県で小さな書店を営むY田家の一人娘Sちゃん(9)が
二学期の終業式の後、学校から一人帰路についたまま行方不明となった。
県警は事件事故の両面で付近を捜索をしたが、何ら手掛かりが掴めぬまま時は経ち
ついに失踪から5日後、事態は最悪の展開を迎えた。

学校から約20キロ離れた山間の廃屋で肝試しをしていた若者グループは
そこに赤いランドセルと少女の遺体を見た。
司法解剖でSちゃんの死因は扼殺と判明したが、何よりも捜査陣を悔恨足らしめたのは
どうやら遺体発見の前日まで彼女が生きていたことだった。

翌日、警察はK田というヒッピー(25・住所不定)を逮捕した。
K田は遺体発見現場付近のヒッピーコミューンで車上生活をしており
以前に何度か近隣の児童に対する卑猥な言動で通報歴があった。

直接的な物証こそ無かったが、警察はこの長髪で痩身のヒッピーを本ボシと睨み
一切を否認するK田に連日苛烈な取調べを行った。

しかし、被害者家族の依頼で調査していた探偵金玉一の見方は違った。