今回のネタは『エヴァンズ』のヒロイン、フランキーについての描写です:

She had on a red skirt, a short green jacket and a brilliant blue beret, and despite a certain resemblance to an organ grinder's monkey (she had long, sorrowful dark eyes and a puckered-up face) she was distinctly attractive.

田村旧訳(ハヤカワ文庫) pp.25-26、新訳(クリスティ文庫)p.30:
赤いスカートと、短いグリーンのジャケット、それにはでなブルーのベレーをかぶっていた。
たしかに、*《オルガンを弾くお嬢さんに感じがそっくりだったが(悲しみにみちた、切れ長の黒い瞳と、暗い表情をたたえていた)、》 なかなかどうして、魅力的な女性だった。

私訳: 手回しオルガンで芸をする見世物の猿にどことなく似ていた(切れ長だが痛ましい黒い瞳と、しかめた顔つきをしていた)が、

クリスティのヒロインにしては、原文ではかなり不細工な部類に入るようですが、田村訳では誤訳というより、わざと改変したのでしょうかね?いやいや、勝手にそんなことしちゃ駄目でしょ
このあとフランキー本人が、自分の学生時代のニックネームは、「モンキー・フェイス」だった(新訳 p.57)、と発言するシーンもあるのにねぇ・・・
ちなみに、ここのところは旧訳(p.47)では「猿面冠者」になってる
出版時はどうだったか知らないけど、今時点で読むとやはり古臭さは否めない表現が他にも結構出てくるが、新訳でかなり修正されているのは良いことだと思う