郵政民営化、手探りの10年=経営縛られ収益力に課題
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日本郵政グループは10月1日、発足から10年を迎える。
東証への株式上場は実現したものの、政府の株式保有比率はなお半数を超える。
経営の自由度は縛られ、民営化当初からの課題である収益力強化は手探りの状態が続いている。

ただ、民営化で期待された経営基盤の強化は苦戦続きだ。
グループの利益の大半を稼ぎ出す金融2社は、マイナス金利で運用収入が落ち込んでいる。
ゆうちょ銀は、ライバルだった地域金融機関と連携。ファンドの共同設立や地銀店舗への現金自動預払機(ATM)設置などに踏み切ったが、
収益の柱には程遠い。全国に張り巡らせた郵便局網を生かせる個人向け無担保融資は6月に認可が下りたが、開始は19年春まで待たねばならない。
グループで未上場の日本郵便は、インターネットの普及や人口減少で手紙やはがきの取扱数量が落ち込む一方だ。
全国一律のユニバーサルサービスを課され、へき地や離島で郵便局を維持する費用も重い。
6月にはがきなどを23年半ぶりに値上げしたが、買収した豪物流大手トール・ホールディングスの不振も響き、抜本的な収益回復策は見えないままだ。

それでも、「もし民営化していなければ今ごろもっとひどい状態に陥っていた」(竹中平蔵東洋大教授)との見方もある。
日本郵政の長門正貢社長は今月29日の記者会見で、民営化の進捗状況について
「始まったばかり。富士山で言えば、まだ一合目、二合目だ」と総括した。