一軒一軒声をかける。50センチも積もった日,3時間かけ歩いて回った。
 毎週きまって木曜日,北海道の男性からの手紙を届けた。以前に転居して行った人だ。
あて名の女性は20歳過ぎのひと。いつも垣根のところに立っていた。3年間ぐらいは続いた。
 2週も続けて便りがない。「すみません」。気の毒になって思わず頭を下げた。
 しばらく後「彼は亡くなりました」とうち明けられた。女性はぼろぼろ泣いていた。僕も泣いてしまった。
 人の心を運ぶ仕事だよ。先輩のことばが身にしみた。幸せも不幸も橋渡ししている実感があった。手紙を待つ人,書く人の顔が見えた