日本郵政は、全国どこでも公平に利用できるとする郵便と金融のユニバーサルサービスの堅持と、競争力強化を両立させる難しさに直面してきた。

例えば、郵便事業では、郵便取扱量が減少する中、離島や山間地を含む全国各地で同一のサービスを均一価格で提供することを求められている。

一方で、民間企業として集配郵送にかかわるコスト削減をはじめ、収支改善策にも取り組まなくてはならない。

 サービスが後退したら国民から批判を受けるリスクがある一方、収益強化のために新規事業への参入を目指せば民間企業から「民業圧迫」という非難を受ける。

現在、日本とTPPに関する協議を行う米国も、日本郵政の事業拡大に反対を表明するなど、さまざまな思惑に縛られている状態だ。

 二律背反に苦しむ中、「極めて厳しい事業環境」(日本郵政)を打破しなくてはならない。

万が一日本郵政が今まで以上の経営危機に直面すれば、一定水準以上の質の高さを保ってきた郵便事業が壊滅的な状況に陥ってしまう。

その上、ゆうちょ銀行とかんぽ生命は合計約200兆円もの国債を保有しているため、日本の財政破綻にまで及ぶ可能性があるからだ。

 現状を踏まえると、上場計画をいったん凍結し、企業としての存在価値を再構築すべきではないだろうか。

このまま上場を果たしたとしても、その後の成長ビジョンを示すことができなければ、同社株を買いたいと考える投資家は現れにくいだろう。

 具体的には、郵便事業のみを再国営化し、競争の公平性を担保しながら金融の新規業務規制の緩和を進めるべきだとの指摘もある。

いずれにしても、このままでは事業が立ち行かなくなり、破綻へのシナリオが現実になってしまう。