娼妓は、客に縁切りを告げて、出入り禁止処分にすることもできたが、女工ではそんなことはできるはずがなく、イヤな相手でも断りにくい。

その点でも女工の方が過酷だったとも言える。

ただし、一方的に女工が被害者で、泣き寝入りするしかなかったという見方は必ずしも正しくないかもしれない。

『女工哀史』には、寄宿舎主任が自分の愛人になった女工を「世話係」という役に引き立て、

その世話係の女工が他の女工の金を窃盗していたなんて話も出ている。寄宿舎は男女別だったが、

寄宿舎主任ともあればどうにだってできたのだろうし、

女工の中にも、権力のある立場の男にすりよって甘い汁を吸おうとするのがいたわけだ。いつの時代も同じだ。