「二つの影が重なるとき」

朝のアスファルトはまだかっちりしていて
隙間にお日様がはいりこむたび身をよじり
くすぐったそうにゆるませていく

これがお昼頃になるともうぐずぐずで
こどもたちのサンダルを飲み込みかねないくらい

小口切りのねぎをのどにひっかからせながら
素麺をたいらげたこどもたちが
ふたたびアスファルトをふんづけるとき
その泥は
ケミカルだけど嫌じゃないにおいを出す

くたびれたホースでおっさんが水をまく
花でも咲かそうとしてるみたい

水を吸い込んで泥は
ますます沼になり
ちょっとどうかと思うくらい暗いにおい
危ないけれど
ひかれるにおい

鐘の歌がなって
おのおの明日の約束などをし
みたびアスファルトをふんづけるとき
ねぎをふくろから突き出させた母親と行き会い
重なった影から夜になる