私は安永蕗子女史は知りませんが、私の好きな詩人は釋超空です。
特に好きな歌は「供養等」と名づけられた以下の連作です。
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人も 馬も 道ゆきつかれ死にゝけり。旅寝かさなるほどの かそけさ 
                                   
道に死ぬる馬は、仏となりにけり。行くとどまらむ旅ならなくに    
                                   
邑(むら)山の松の木(こ)むらに、日はあたり ひそけきかもよ。旅人の墓 
                                   
ひそかなる心をもりて、をはりけむ。命のきはに、言うこともなく   
                                     
ゆきつきて 道にたふるゝ生き物のかそけき墓は、草つゝみたり
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なお、此の歌には作者による下記の前書きが添えられています。

『数多い馬塚の中に、ま新しい馬頭観音の石塔婆の立ってゐるのは、あはれである。
又殆ど、峠毎に、旅死にの墓がある。中には、業病の姿を家から隠して、死ぬまでの出た人のなどもある。』
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この前書きを踏まえて上記の連作を読むとき、私は云い知れぬ寂寥感を感じます。