>>100-101
応用を考えてみよう。「『ちゃっかり』している」という表現がある。
「ちゃっかり」とはどのような表現だろうか。検索すると、
>[副](スル)自分の利益のために抜け目なく振る舞うさま。「案外―している」
という解説がヒットし、「抜け目ない」振舞いとして説明されている場合が
多いことが分かる。「ちゃっかり」&「英語」で検索すると、「ちゃっかり」
の訳語が示されるが、「抜け目ない」に対応させるように"shrewd"と訳されて
いる事例が多く、"cunning"、"calculating"などの訳語も示されている。
だが、この解釈は適切だろうか。私には、"a shrewd person"と
「ちゃっかりした人」は、明らかに異なっているように思える。
なぜながら、「ちゃっかり」には、本来的に「意外性」が伴っており、
「『ちゃっかり』している」という言い方は、単に「抜け目がない」という
形容ではなく、「(自分の損得にかかわることに関しては)案外/意外と
抜け目がない」ことを表現しているからだ。これに対して、
"he/she is/turns out to be surprisingly/unexpectedly shrewd"という
言い方がされることはまずない。そういう言い方をするなら、
「ちゃっかり」に相当するように当てられる英語は、"shrewd"ではなく、
"clever"だろう。つまり、「『ちゃっかり』している」とは、
"being surprisingly/unexpectedly clever when it comes to
one’s own interest"ということ、言い換えると、「抜け目がない」/
"being shrewd"なのではなく、それ以外では抜け目があるように
見えながら、自分の損得にかかわることに関する場合だけは、
抜かりなく/賢く/"clever"に振る舞うことを表現していると言う
ことができるだろう。