JR、手荷物検査は「困難」 新幹線殺傷、五輪へ課題

 走行中の東海道新幹線車内で9日夜、男女3人が刃物で襲われ男性1人が死亡した事件。JR東海は11日、「亡くなったお客様に心からご冥福をお祈り申し上げます。安全確保に取り組みます」とのコメントを発表した。菅義偉官房長官は11日午前の記者会見で、
内閣官房を中心に関係省庁の局長級による会議で対応を検討するよう指示したことを明かした。

 また国土交通省は10日、JR各社と大手民間鉄道会社に対し、セキュリティー確保の徹底を文書で要請。駅などに警備員を配置し、「警戒中」と記した腕章をつけさせるなど、「見せる警備」での犯罪抑止の一層の徹底を求めた。
また、非常通報装置を適切に使い、車内の異常への素早い対応を要請した。

 新幹線車内では2015年の「のぞみ放火事件」のほか、刃物を使った殺傷事件も起きている。

 中国など海外では、高速鉄道の駅で空港のような手荷物検査が実施されており、新幹線でも導入を求める意見がある。だがJR各社は「乗客の利便性を著しく損なう」と消極的。国交省の幹部も「乗降客数やダイヤの過密さ、駅の形状からも困難」と話す。

 一方で01年の米同時多発テロ以降、防犯カメラや非常用ブザーの設置を強化。JR東海は新幹線全車両の9割で客室やデッキに防犯カメラを設置済みという。ただ、客室内の異常覚知や犯罪抑止の効果はあるが、今回のような凶器の持ち込みや突発事態は防げない。

 20年には東京五輪・パラリンピックが控える。刃物や不審物の持ち込みをどう防ぐか、鉄道各社にとって大きな課題となっている。
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