これは、多くの国民が、個別的自衛権の行使は憲法9条に違反しないと考えていることを意味している。
従来の政府解釈は、広く国民に支持されていると言えよう。

長谷部恭男・早稲田大学教授が、集団的自衛権行使容認に踏み切る以前の政府解釈は
「機能する解釈」だったとするのも(「藤田宙靖教授の『覚え書き』について」(同『憲法の理性』補章U)、
そのような趣旨だろう。

そうすると、「憲法13条で、憲法9条の例外が認められる」という解釈は、憲法の文言の「素直」な理解であり、
帰結も「自然」である。また、多くの「国民の理解」もある。

もちろん、特殊な解釈技法を駆使したり、絶対平和主義の道徳を至上の価値と位置付けることを前提にしたりして、
憲法9条を優先させる解釈をすることもできなくはない。

しかし、それは、かなり不自然で技巧的な解釈であり、国民が理解しやすいものでもない。
要するに、自衛隊違憲説の方が、「不自然」で「国民に分かり難い」解釈である。