石川啄木「一握の砂」だね

  はたらけど
  はたらけど猶わが生活楽にならざり
  ぢっと手を見る

  つくづくと手をながめつつ
  おもひ出でぬ
  キスが上手の女なりしが

  真白なるラムプの笠に
  手をあてて
  寒き夜にする物思ひかな

  底知れぬ謎に対(むか)ひてあるごとし
  死児のひたひに
  またも手をやる