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『快絶壮遊[天狗倶楽部]』横田順禰著 ハヤカワ文庫800円+税
坪内祐三

NHKの大河ドラマ『いだてん』が始まった時、横田順 禰さんのことを思い出した。 ところがそのあとで横田さんが亡くなっていたことを知り(亡くなったのは今年一月 四日だが新聞に計報が載った のはその少しあと)驚いた。
『いだてん』の主人公金栗四三をはじめとしてこのドラマには 明治のスポーツ(金栗や 三島彌彦など真面目な人もいるが多くはバンカラ)団体 「天狗倶楽部」の人たちが登場し、
その「天狗倶楽部」こそはSF作家である横田さんがまさに生涯をかけたライフワークとして研究し続けて来たのだから。
横田さん、と「さん」づけ で書いているのは、二十五年ぐらい前、私の自宅兼仕事場 の近く、世田谷区野沢に住んでいた横田さんとしばしば会ったり、電話で長話ししていたことがあったからだ。
中略

『いだてん』に「監修・横田順禰」というクレジットはない。 解説を担当している北原尚彦によれば、
横田さんは「企画段階から協力し、資料提供をして」いたのだが、途中で 面倒くさくなって手を引いたのだという。
しかも、「名前 も出さなくていいって言っちゃった」という。
もしそれが事実だとしても クレジットを入れるのが筋だろう。今からでも遅くはない。それが故人に対する礼儀 だと思う。あらためてさ んの御冥福を祈る。あなたは 立派な仕事をされました。
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