ここが本スレと気付かず他に書いてしまった

ディックは『暗闇のスキャナー』に尽きる
SFはフレーバーに過ぎない私小説に近いものであり彼のなりたかった“まとも”な小説家の水準で書かれた唯一の作品である

ナムの頃妄想でも何でもなく政府の陰謀でドラッグがばら撒かれていた時代彼の家はジャンキーの溜まり場であった
神の導きか(ディック本人はある程度そう思っていたようだ)彼は生まれつき持つ薬物への強力な耐性により生き残ったが友人達は皆死ぬか廃人になった
スローデス緩慢な死作中でそう呼ばれる薬物により知ってか知らずか束の間の楽しみに人生を燃やし尽くした彼らとの冗談飛び交い愛に満ちた死と絶望へのトリップ
そして彼らがいかに人と言えぬものになっていったか
ただ一人その報いから逃れた彼は書かざるを得ない
彼らから全てを奪った悦びへの戒めとして
あの愛すべき愚か者達を覚えているのは彼だけなのだから

それ以前の作品は娯楽として成立させることに主眼を置いており以降は彼の宗教観の手引きと化している
逆に言えば娯楽としては中途半端で彼なりの到達点には至る前であるが彼を創作に救いに駆り立てた原体験がそこにある