発刊されたそれには「第一部・完」と記されているが、平井和正はこれに対して相当の迷い、もしくは葛藤を覚えていたのではなかろうかと思うのだ。
78年には真幻魔大戦執筆への下準備をしていただろうから、新幻魔大戦をその前章として位値付ける新たな構想に踏み切ったと考えられる。
「第一部・完」の付記は、そのことから、「新幻魔大戦の続きを書くに書けないもどかしさ」と、目前の真幻魔のためにも「新をなかったことにできないもどかしさ」を簡潔に現した記号なのかもしれない。

発刊されなかった不可解さ。第一部・完の不自然さ。
そこには平井和正の「当初の新幻魔大戦の構想」を捨て切れなかった迷いや苦悩が現れていやしないか。
彼が長いこと発刊しなかった事情に一度も触れていないことも、これを裏付けていやしないか。