>>121のつづき
上記に書いたとおり、新幻魔大戦には未筆の部分への伏線が大量に残されている。
79年に真幻魔大戦執筆に着手することで、それらを(すべてではないにしろ)捨て去ることになるのだ。

新幻魔大戦の第二部が書かれるわけがないのだ。
作家としてのプライド。力を入れたのに、雑誌からの打ち切り(だろう)の宣告。「そこ」に辿り着こうと多くを組み立ててきた、その労を自らの手で捨てることへの未練と抵抗感。
彼は苦悩していたのじゃないか。
新幻魔大戦連載中断後、連載が開始されたレクイエム執筆時期の手紙の記述に「作家になって以来の大スランプ」とあるけれど、スランプに陥ったわけは、だから、そのへんにあるのじゃなかろうか。
自費出版「ヒライスト」にはスランプの原因の一つとして、読者へ返事を大量に書いたためという記述がある。しかし、本当の原因、核心の原因は、実はこのあたりにあるのでは……。

……GLAの影響下に入った平井和正はそれらを乗り越える。
「幻の新幻魔大戦」は幻と消え去り、さりげなく世界観を変えられた真幻魔大戦が猛烈な勢いで書き継げられ、15冊におよぶ大長編となる。