人間の未来が邪悪(幻魔化)であったとしても、そこに寄り添う黄金の心(ロボット、狼男)の影響で、また別の未来が開けるという希望が、平井文学の芯としてあったのではないか。
黄金の心こそ、平井和正がこだわり続け、書き続けるべきことだったのではなかったか。

昔、手塚治虫が「人間が正義の味方であるこど気に入らない」という主旨のことを〈全集のあとがきだったか〉書いていて、火の鳥であったり、宇宙人であったり、ロボットあたりだと彼は反撥心を覚えないらしい。
人間には相応しくない。人間には不相応。そう感じる作家の感覚。
平井和正が多用した黄金の心が「人間でないもの」「狼男、ロボット」に与えられたのは、もしかすると手塚治虫の心理に通じる、そのあたりに理由があるのかもしれぬ。