「じゃここで、あなたは大英断をせまられているわけだ」公安委員長はいった。「政治家として、時には手つづきを無視してでも、緊急措置をとらなければならん時もある――
あとの非難はわれわれ全員がかぶらなきゃなるまい。場合によっては、裁かれる身になろう――それでもやる必要がある」

 アベ総理は眼をつぶっていた。――保守政権だろうが何だろうが、そんなことに関係なく、為政者が責任をとらねばならない時がある。
それが妥当であったかどうか、そんなことは結果を見てからしか判断できない。そしてどうせ人間というものは、『完全に』責任をとれるようにできていないのだ。
やみくもの試行経験の、それでもその時の最良と思われる行為をえらぶよりしかたがない。

「よし……」とアベ総理はいった。「ではきまった……」









「マスク二枚配布しよう。一家に二枚だ。」