情勢変化で色々思って「復活の日」を読み返してるんだが
やっぱり小松左京だなあ、と思うのは、ニューヨーク地下での

>「ガーランドだ」骸骨をランプで照らしながら、闇の中でカーターが、息のもれるようにつぶやいた。「かつての俺の上司だ……とうとうやったな。お前とシルヴァーランドの……」
「ネーレイド号、どうぞ!」吉住は肩にぴったりついた携帯無電機のスイッチをいれて叫んだ。
「こちら吉住――緊急事態A、全ミサイル発射されました。――まにあわずに申しわけありません。至急湾外退避。南極へ警報ねがいます」
「了解……」かすかな声が答えた。

これの後の、ここ

>これでみんなおわった。――と吉住は思った。全身にどっと疲労がおそってきて、立っていられない気持だった。椅子をさがして、腰をおろすと、突然滂沱として涙があふれ出した。緑色のランプは、あいかわらずつきっぱなしだった。
その巨大な爬虫類の眼のような明りを見つめながら、彼はあわただしかった三十五年の生涯をふりかえって見ようとした。

 ――ところが何一つ思いうかばず、ただ、とうの昔に人々の死にたえた故郷の家で、今ごろはあのそびえたつ藁屋根の横に、泰山木の大きな白い花が咲きみだれているはずだ、ということだけが思いうかんできた。

それから人魂のような緑の光にわずかに半面を照らされて、横たわっているカーターをながめ、
今から千年後、あるいは二千年後にこの地下室を発掘する学者は、大昔の米国元首公邸の地下九階に、軍服を着た骸骨と潜水衣を着て頭をうちぬかれた骸骨、
それに同じように潜水衣を着て、明らかに日本人とわかる骸骨を発見して、この謎をどうとくだろう、と思ったりした。


……この客観性、かつ叙情性よ
客観的に書く作家ならいるし、叙情的に書く作家も同じくらい沢山いる
でも両方を同時に持ち合わせた作家はほんと稀有
「とうの昔に人々の死にたえた故郷の家で、今ごろはあのそびえたつ藁屋根の横に、泰山木の大きな白い花が咲きみだれているはずだ」これを書ける作家はいない