古事記が偽書ではないという大きな証拠は、万葉仮名の仮名遣いが奈良時代の古い文献と平安初期の文献では異なっている部分があるという点が根拠になっている。
しかもそうした違いは、江戸時代の国学者たちの研究を元に、大正時代になってから「上代特殊仮名遣」として発見されたものだった。

そういう意味では、ことばも地層と同じようにその時代の特徴が刻印されているものなので、ことばの変化にはそれが書かれた時代を特定できる重要な証拠が刻まれているとも言える。

橋本進吉 『古代国語の音韻に就いて』
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