>>170
> 「SFです」 と言った瞬間にそういう沢山の足枷がドカッとのしかかる

だから、それがSFを衰退させミイラ化させてしまった
そういうお約束や足枷の多いジャンルはだいたい衰退することになる
いまや本格ミステリーもハードボイルドも見る影はなく、古典だけが読み継がれている
だからSFはそういった足枷をはずし、もっと自由に宇宙や世界を観想(speculation)すべきだと思う

そもそも科学技術の進歩の遅さも問題で、1960年代末に人類が月面に降り立って以来、有人宇宙飛行はそれ以上先に進まず地球周回軌道の往復にとどまっている
大規模な宇宙開発に必要となる核融合炉も、半世紀前には30年もあれば実用化されると予想されていたものがまだ実験段階の状態のままだ
こうした巨額な費用を必要とするプロジェクトは、世界経済や政治体制の状況にも左右され、予算削減や計画の中止など不安定要因も多い

ディープラーニングで活気づいているAIについても、去年ノーベル物理学賞を受賞した数理物理学者のペンローズは、量子重力理論が解明されなければ知的思考プロセスの解明は無理ではないかと主張している
ある意味、SF作家よりも科学者の方が、こうしたラジカルな発言のできる余裕があるようにも見える

SUSY(超対称性理論)の間接的証拠が期待されていたLHCも、ヒッグス粒子以降、これといった成果があがっていない
これに関連し、宇宙の96%を占める質量とエネルギー(ダークマターとダークエネルギー)の正体もまだ分かっていない
SUSYも超弦理論も数学的にはうまくいっても、その根拠となる証拠を自然界で見つけることには成功していない

そもそも、物理学者自身も自然科学にこれほど数学が役に立つ理由を理解しておらず、ユージン・ウィグナー『自然科学における数学の理不尽なまでの有効性』という講演録は、この分野の基礎文献として俎上にのる機会も多い

数学の話をすれば、自然科学を通じて私たちにもっともなじみ深い実数の世界も、その実体は正体不明の超越数がほとんどすべてを占めており、自身が超越数の円周率πと自然対数の底eの合計 π + e が超越数かどうかも分かっていない

そうした科学の営みを、ノイラート(科学哲学者)は「我々は航海中の船を大海原で改修しなければならない船乗りのようなものだ」と譬えている