>>529
関係ありそうな情報ということでは、入りにくいお店などの「敷居が高い」の使い方は、「ハードルが高い」の転用という可能性もある。
だから、敷居と閾がおなじ意味だと分かっただけでは、まだ調べ方と頭の使い方が足りないと思う。

たとえば、「高級すぎたり上品すぎたりして、入りにくい」といった場合、従来の日本語にはそれを適切に表現できることばがなかった。
そのため、本来の意味とは違うかたちで「敷居が高い」が使われるようになったと見ることもできる。

近い意味では「ハードルが高い」が使えるものの、気軽に入りにくいお店などを「ハードルが高い」というのは少々大げさな表現となりすぎる。
そこで、ハードルをグイッと下げ敷居の高さまで低くし、「敷居が高い」とすることで、微妙なニュアンスを表現したということかも知れない。

また、慣用句を勝手に変更し、「敷居を下げる」にしてもかまわないのかという問題もある。

たとえば、自分が恥をかいたときに「穴があったら入りたい」という慣用句を使うことはある一方、誰かが恥をかいたときに「穴があったら入れたい」という使い方はしない。

ふつう慣用句というのはひとかたまりで意味を表現するものだから、その一部を変えて使うようなことはあまりしない。
(ただし、最近では「風呂敷を広げる」の反対で、「風呂敷を畳む」仕事というのも登場している)

そうしたこと全般を考えてみると、「高級すぎたり上品すぎたりして、入りにくい」といった場合に使われる「敷居が高い」は、従来の辞書に記載されている慣用句とは別種の、比喩的表現ではないかというふうに捉えることもできる。
そして比喩的表現であれば、「敷居を下げる」という使い方も強ち誤りではないということになる。