たしかあの年のことだったと思う
吐く息の白さも気にならなくなるころに更なる寒波が押し寄せて
もはや「寒い」と言うのも飽きがくるような年だった

じわじわと減ることで暖をつないでくれる灯油を買い足しにいかねば…
やっとのおもいで辿りついた給油所も寒さが支配していたが
それでも18リットルたまるまではしのぐしかない
呼吸からくる肺の痛みにも耐えていたその時

見知らぬ男が立っていた
いや話しかけてきていたのだ

みじかい会話をおえたあとのことはもうよく覚えていない
そもそも短かったのかどうかすらすでにあやふやなものになろうとしていた
ただ何か彼方の記憶が蘇ろうとしてはいた

今の人類はこの量を18リットルとかんがえている
だがこれはジッショウ=イッ・トカンであったのだと私の中のなにかがささやいていた
これはきりのいい数だったのだ…