>>426
『彼の視線は、横の壁に向けられていた。そこは照明や柱のかげんで死角になっていて、帝国軍の兵士たちが壁にナイフでさまざまな文字をきざんだ痕がある。
「やあ、あったあった」と言って指さす先を見ると、帝国公用語で短い文章が書いてある。声に出して、ぼくは読んでみた。
「くたばってしまえ、ホルト中尉、いずれ背中から撃たれておだぶつだ、大神オーディンはお前の罪をご存じだぞ……」
「へえ、ちゃんと読めるのか、帝国語が」
「いちおう学校で習いますから」
もともとそれほど差のあることばでもない。』